[ 2010年7月17日 06:00 ]

「ラ・ボエーム」第2幕のワンシーン (C)Ramella&Giannse-Fondazione Teatro Regiodi Torino
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 今回上演されるのは、初演100年を記念して96年に製作されたジュゼッペ・パトローニ・グリッフィ演出によるプロダクション。映画監督としても活躍した演出家だが、登場人物のキャラクター描写に重点を置いたオーソドックスなステージ作りで作品本来の魅力がストレートに伝わってくる工夫がなされている。

 作品についても少しだけ触れておこう。「ラ・ボエーム」は前述したとおり同劇場で1896年2月1日、トスカニーニの指揮で初演された。舞台は19世紀前半、パリのカルチェ・ラタン。ボヘミアンと呼ばれる自由奔放な生活を送る若い芸術家や文化人の卵たちの純愛をテーマにした青春恋愛物語。全4幕からなる全体の構成は均整のとれた作りとなっており随所にプッチーニならではの甘く切ない旋律が言葉にピッタリと寄り添い、悲劇的な結末を迎えるこの甘酸っぱい恋愛劇を絶妙なタッチで盛り上げていく。音楽的にはワーグナーが確立したライトモティーフ(示導動機)の手法や19世紀末においては斬新ともいえる和声進行を巧みに活用した意欲作。初演は賛否両論あったものの、概ね成功といわれ、その後、世界中のオペラ劇場のレパートリーには不可欠の名作となったことは読者、リスナーの皆さんもご承知の通りである。

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2010年7月17日のニュース