不屈の精神で…「沈まぬ太陽」ついに映画化

[ 2008年12月9日 06:00 ]

 山崎豊子さん原作で、1985年の日航機墜落事故を取り上げた「沈まぬ太陽」が渡辺謙(49)主演で初めて映画化される。実在の人物や企業のイメージを大きく傷つける可能性があるため、これまで「映像化は不可能」とされてきた。若松節朗監督のメガホンで、製作費20億円、上映時間3時間を超える超大作となる。来年秋公開予定。

 「沈まぬ太陽」は航空会社の組織の腐敗を描いた小説。労働組合の委員長を務めたため、世界各地の職場をたらい回しにされる社員が主人公だ。
 メガホンを執るのは00年の映画「ホワイトアウト」などを手掛けた若松監督。渡辺について「昭和の力強い空気感を出せる希有(けう)な俳優。不条理の中、信念を曲げなかった男の矜持(きょうじ)を表現したい」と説明。渡辺は「これまで何人もの製作者が挑み、果たし得なかった作品と聞いてます。全身で、この大作に挑み、しっかり体感したいと思っています」と抱負を語る。来年1月にイランでクランクイン。また、ケニア・ナイロビでのロケに備え、黄熱病などの予防接種も打った。
 同作品は「映像化不可能」とされてきた。実在の人物や企業を連想させトラブルに発展する可能性があり、航空業界からの撮影協力を得るのも難しいためだ。00年に発表された大映と東映の共同製作による映画化や、民放局によるドラマ化はいずれも実現せず。今回も、角川映画(旧角川ヘラルド映画)が06年に映画化を発表。撮影に入らないまま、08年公開のスケジュールを過ぎたことから中止が噂されていた。
 しかし、大映時代からの経営者が残る角川映画が各方面と調整。最初の発表から10年越しの悲願がかなう。日航側には製作を報告したが、返答はないという。航空機のシーンはセットとコンピューターグラフィックス(CG)を使う。
 「映像化なしでは死ねない」と話していたという山崎さんは、製作サイドに(1)主人公の不条理(2)遺族の切なさ(3)大企業のあり方――の表現を要請。若松監督も「人間ドラマを描くとともに、企業の人間性の回復を警鐘したい」とする。山崎作品の映画化は76年の「不毛地帯」以来。
 撮影は米ニューヨークや日本各地でも行われ、夏前まで予定。群馬・高崎にある山の木を伐採し、御巣鷹の尾根の墜落事故を再現する。

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2008年12月9日のニュース