【内田雅也の追球】“ホットコーナー”の好守

[ 2024年4月18日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2-0巨人 ( 2024年4月17日    甲子園 )

<神・巨>4回、吉川の一ゴロを好捕し、本塁へ送球する大山(撮影・平嶋 理子)
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 9回を除き毎回走者を背負いながら、阪神は零封で勝ちきった。しのいだ投手陣はもちろんだが、守備陣の貢献は大きい。守り勝ちである。

 大きかったのは2点を先取した直後。4回表の無死満塁を無失点で切り抜けたことである。

 殊勲者は一塁手・大山悠輔の好守である。無死満塁の前進守備。吉川尚輝のライナーできてハーフバウンドする難しいゴロを止め、本塁送球で封殺してみせた。

 野球では古くから三塁をホットコーナーと呼ぶ。本塁から近く、ホットな(強烈な)打球が多いコーナー(場所)という意味がある。

 ただし、これは大リーグ草創期の1890年代、強打者が右打者ばかりだった当時にできた言い回しである。左の強打者も数多い現代の野球では、一塁も十分にホットコーナーと呼べる。

 以前も書いたが、無死満塁において、守る方も攻める方もカギを握るのは最初の打者である。無死から走者を還せれば大量点にもなる。だが最初の打者が凡退すると以後の打者に重圧がのしかかる。闘将と呼ばれた西本幸雄の持論である。

 つまり、大山の好守で吉川尚を打ち取ったことで無失点の希望は膨らんだ。1死から投手・赤星優志を空振り三振。1番・萩尾匡也の一、二塁間ゴロも大山は飛び出しよく、振り向きざまの一塁送球(投手カバー)で仕留めた。見事、無失点で切り抜けたのだった。

 実はこの無死満塁を招いたのは無死一、二塁からバントを処理した大山の一塁低投(犠打失策)が原因だった。自分のミスを自分で取り返したわけである。

 5回表先頭、佐々木俊輔の一、二塁間ゴロも軽快にさばき、素早いトスでアウトにしている。

 監督・岡田彰布は一塁守備を重要視している。前回監督時代から、アンディ・シーツ、新井貴浩、昨年就任後に一塁に固定した大山とゴールデングラブ賞の一塁手を輩出している。大山の守備での貢献をたたえている。

 4番に座る打撃は開幕からの不振が今も続いている。この夜も無安打だった。6回裏1死一、二塁での併殺打では満員観衆のため息を呼んだ。打率はセ・リーグ30傑の下から2番目、三振はリーグ2番目に多い。

 それでも、打てなければ懸命に守る。一塁への力走も怠らない。ホットな姿勢は伝わってきていた。 =敬称略= (編集委員)

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