【内田雅也の追球】「2025」まで続く夢

[ 2023年11月30日 08:00 ]

85年12月10日、タイガース球団創立50周年記念およびセ・リーグ、日本シリーズ優勝祝賀会が行われた

 余談から書くが、阪神は毎年、優勝祝賀会開催のため、会場を抑えているそうだ。球団社長・百北幸司から聞いた裏話を覚えている。「毎年予約をして、優勝の可能性が消えた時点でキャンセルをしていました。今回ようやく実現しました」

 29日夕、大阪・梅田にあるリッツ・カールトン大阪の宴会場は祝賀ムードに包まれていた。

 リーグ優勝の祝賀会は2003、05年と開いていたが、日本一となっての祝賀会は1985(昭和60)年以来、38年ぶりだった。当時の会場は大阪・中之島のロイヤルホテルだった。

 当時の監督・吉田義男が「いろんなことを思い出して、涙が何度も出てきました」と、汗と涙で濡れたハンカチを手にしていたのを思い出す。

 あの日、開催日の12月10日には意味があった。阪神球団の誕生日なのだ。1935(昭和10)年、大阪野球倶楽部(タイガース)として設立総会が開かれた。85年の祝賀会は球団創立50周年記念でもあったわけだ。

 この日、主催者を代表して冒頭にあいさつした阪神電鉄会長・球団会長の秦雅夫は、今春4月1日付で社長から会長に就任した当時の話を披露した。「この春、トップ交代のあいさつ回りをしていた際、2025年の大阪・関西万博に向けての機運醸成に優勝をと申し上げていたが、半年後、現実のものとなり、ホッとして、うれしく感じております」。来賓や出席者には関西政財界の関係者も多く、大阪・関西万博を引き合いに出したのだろう。

 ただ、2025年は万博に加え、球団創立90周年の節目でもある。来年は甲子園球場が完成して100周年。再来年は球団90周年。長い歴史と伝統を思い返す節目が相次いでやってくる。

 66歳の監督・岡田彰布は昨年の就任時「そう長くは監督ができないだろう」と自覚していた。その一方で最近は「万博は再来年か……。そうか、球団90周年も同じ年か……」と漏らしたことがあった。2025年に大いに関西を、そして野球界を盛り上げようと意識しているようである。

 もちろん、その前に来年は連覇がかかる。そして再来年の節目には3連覇に挑んでみたい。

 来年、再来年の話など鬼が笑いそうだが、夢は2025年まで続いている。 =敬称略= (編集委員)

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