神戸学院大付で唯一の女子選手 男女「ダブル甲子園」目指す 鬼沢日和の特別な熱い夏

[ 2023年7月14日 04:00 ]

第105回全国高校野球選手権兵庫大会2回戦   神戸学院大付7―1御影 ( 2023年7月13日    明石トーカロ )

<御影・神戸学院大付>ユニホームを来て応援する神戸学院大付・鬼沢日和(中央)(撮影・河合 洋介)
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 第105回全国高校野球選手権大会(8月6日開幕、甲子園)の出場校を決める地方大会が13日、各地で開催された。兵庫大会の初戦を突破した神戸学院大付には、男女の「ダブル甲子園」を目指す女子部員がいる。鬼沢日和(ひより=3年)は、部員120人の中で唯一の女子選手。同校初の聖地出場を願いながら、女子高校野球「全国高等学校連合丹波」の一員として、全国高校女子硬式野球選手権大会の決勝の舞台である甲子園出場も目指す。

 部員数120人を誇る神戸学院大付の大応援団の中に、ユニホームに身を包んで声をからす女子部員がいた。鬼沢は、同校初の女子部員。硬式野球部に入部した理由は男子部員と変わらない。「どうしても甲子園に行きたかったんです」――。

 3学年上の兄・凜太郎さんの影響で、小学4年で野球を始めた。兄は同校野球部で主将を務めた憧れの存在。だが不幸にも兄の高校最後の年だった20年はコロナ禍に見舞われ、春夏ともに甲子園大会が開催されなかった。

 「兄は甲子園に行きたくても絶対に行けない環境にあった。ならば自分が、その道を目指そうと思いました」

 女子高校野球の全国大会決勝が甲子園開催となったのは21年から。進路を決める中学3年時点では、女子野球部のある高校を選んでも甲子園には立てなかった。だから兄と同じ神戸学院大付に進み、岩上昌由監督に尋ねた。「選手として入部できますか?」。監督は迷わず、うなずいた。

 男子部員と同じ練習をこなしてきた。長距離走で遅れると、同僚が手を引っ張ってくれた。「仲間外れにされることなく、ずっと支えてくれました」。学校生活では、同僚に恩返ししたい一心で生徒会長に立候補。「試合に出られない私が、どうすれば野球部に貢献できるか。生徒会長になり、野球部が学校を引っ張れるようにしたかった」。夏の大会の背番号が発表されたのは試合前日。全選手とグータッチし、「頑張ってね」と伝えた。

 迎えた初戦の初回2死無走者。3番・峯松倖生(こうせい=3年)の打席で、鬼沢が応援歌であるX JAPAN「紅」のソロパートをサプライズで独唱した。紅一点の歌声が緊張する仲間を勇気づけ、ここから一挙3安打4得点。峯松は「しっかり聞こえました。練習から誰よりも声を出している。野球部に欠かせない存在です」と感謝した。

 女子高校野球の選手としては「連合丹波」に所属し、全国大会の決勝舞台である甲子園も目指している。「まずは、みんなが甲子園に連れて行ってくれると信じています」。甲子園のためなら、性別の壁も越えられた。男女の「ダブル甲子園」を目指す特別な夏が始まった。(河合 洋介)

 ◇鬼沢 日和(おにざわ・ひより)2005年(平17)7月23日生まれ、兵庫県出身の17歳。小4から東灘少年野球団で野球を始める。神戸学院大付では硬式野球部に所属し、二塁手。女子高校野球の連合チーム「全国高等学校連合丹波」では二塁手兼投手としてプレー。

 ▽全国高校女子硬式野球選手権大会 全国高等学校女子硬式野球連盟と兵庫県丹波市が主催し、今年で27回目を迎える。今大会は58チームが参加し、今月22日から兵庫県内の丹波会場、淡路会場において予選トーナメントを実施する。両会場のベスト8による決勝トーナメントを準決勝まで兵庫県丹波市のつかさグループいちじま球場で行い、決勝は8月1日に甲子園球場で行う。

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