ドラ1候補の東洋大・細野を元審判員記者がジャッジ!一級品の直球 中大・西舘とともにプロで通用

[ 2023年4月11日 05:00 ]

ブルペンで投げ込む細野
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 1月にスタートした「突撃!スポニチアンパイア」。11年から6年間、NPB審判員を務めた柳内遼平記者(32)が、フル装備で選手たちの成長や、魅力をジャッジする。第4回は巨人が今秋ドラフトの1位候補にリストアップしている東洋大の最速155キロ左腕・細野晴希投手(4年)。東都2部リーグで輝きを放つドラフトの目玉を紹介する。

 全国から有力投手が集結する東洋大のブルペン。アップを終えた細野に「NPBのゾーンでやりますね!」と先制パンチを繰り出した。「緊張するなぁ」といいながらマウンドに向かった1メートル80、87キロの左腕。「プレー!」の合図でセットポジションに入ると目に殺気が宿った。

 最速155キロの直球は本物だった。しなやかに腕を振ると剛球がミットに「ドンッ!」。数字だけではなく本当に威力がある直球は音が違う。捕手のミットを押し込む振動が球審のおなかにも「ビリビリ」と響く。NPB審判員時代に球審を務めた中日・小笠原がそうだった。32歳となり脂肪もついたおなかが「一級品の直球だ」と言っているようだった。

 腕を振る細野の表情が一瞬で曇った。低めに投げ込んだ快速球。記者はボール半個低いと「ボール!」とブルペンに声を響かせた。細野は投げ終わった形のままでジッと見つめ「ボールなのか、そこは…」と不敵に笑った。ソフトバンク・藤本監督や西武でシーズン55本塁打したカブレラを退場にしてきた武闘派アンパイアは「何を…」と思ったが、凄いのはここから。次の球はそのボール半個分、高く決まって「ストライク!」。ただ者ではない修正力だった。

 東都2部の春季開幕戦だった4日は、プロ12球団29人のスカウトが集結。変化球もスーパーだった。決め球のスライダーは投本間の18・44メートルの中間点を過ぎてから急激に大きく曲がる。これだけの切れと変化量だと甘く入っても捉えることは難しい。さらに「試合ではあまり使っていない」というスプリットが魅力的。落ちは少ないが腕の振りが直球と同じで「チェンジアップ」のようにタイミングを外す。ブルペン投球を終えると細野は脱帽し「ありがとうございました!」と頭を下げてくれた。マウンドを降りると謙虚な大学生そのものだった。

 プロのエース級のボールを披露した細野にも課題はある。昨秋までは投げてみないと好不調が分からない「箱の中の細野」状態。悪い時はボールが荒れ、直球も走らない。「もうダメだという日もあった。上のレベルでやるために修正力が足りない」と今年からは無走者でもセットポジションから投じることで安定感を高めている。

 実際にブルペンに入り「ドラ1は間違いない」と確信。唯一の欠点を克服すれば、間違いなく今後、侍ジャパンを背負っていくような存在にもなりうる好投手だ。

 ◇細野 晴希(ほその・はるき)2002年(平14)2月26日生まれ、東京都八王子市出身の21歳。加住小2で野球を始め、東海大菅生中では軟式野球部に所属。東亜学園(東京)では1年夏からベンチ入りも甲子園出場はなし。東洋大では1年秋にリーグ戦デビュー。50メートル走6秒7、遠投125メートル。1メートル80、87キロ。左投げ左打ち。

 ◇柳内 遼平(やなぎうち・りょうへい)1990年(平2)9月20日生まれ、福岡県福津市出身の32歳。光陵(福岡)では外野手としてプレー。四国IL審判員を経て11~16年にNPB審判員。2軍戦では毎年100試合以上に出場、1軍初出場は15年9月28日のオリックス―楽天戦(京セラドーム)。16年限りで退職し、公務員を経て20年スポニチ入社。同年途中からアマチュア野球担当。

 【取材後記】1月に企画が始動し「ドラ1候補の投手は全員ジャッジしよう!」と誓った。2月に中大の最速155キロ右腕・西舘=に突撃。取材の中でライバルに細野を挙げ「中大が手も足も出ない投球をされて“これだけの投手がいるんだ”と思いました」と話していた。2人は昨春の1部、2部入れ替え戦で激突。1勝1敗で迎えた3戦目に中大が勝利し1部残留を決めた。西舘は9回1失点で完投勝利、細野は7回無失点と一歩も引かない名勝負を見せた。西舘をジャッジしてから2週間後に細野に取材。先を越されたことを知ると「自分が後なんですか…。(自分のボールが)ショボく見えると嫌だな」と本気で心配していた。大丈夫。2人とも即、プロの1軍で通用する超一級品です。(アマチュア野球担当・柳内 遼平)

 ≪1月から井上新監督≫1月に井上大(まさる)新監督がコーチから昇格。リーグ戦初陣だった第1週は東農大に2連勝で勝ち点を獲得し、好発進した。大阪桐蔭から東洋大に進み、松下電器(現パナソニック)でプレー。細野とは昨年12月に面談し「本当にプロに行きたいのならば何かを背負って投げろ。お前が投げて負けても皆が納得する姿を見せろ」と激励した。開幕戦で10回1失点、12奪三振で完投勝ちした細野からはウイニングボールを手渡された。

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