「私は諦めない」敏腕代理人が握る筒香と有原の来季の行方

[ 2022年11月23日 08:00 ]

ジョエル・ウルフ氏
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 今年は11月上旬にネバダ州のラスベガスで行われた大リーグのGM会議で、日本メディアから熱い視線を浴びたのは、大手エージェント会社「ワッサーマン・メディア・グループ」の野球部門代表、ジョエル・ウルフ氏だった。現在、ワッサーマンはパドレスのダルビッシュ有投手(36)、カブスの鈴木誠也外野手(28)、ツインズの前田健太投手(34)といった多くの日本選手を抱える。今オフ、ソフトバンクの海外FA権を行使してメジャー移籍を目論む千賀滉大投手(29)の代理人にもなり、注目される存在だ。

 千賀の動きも、もちろん気になるところだが、11月8日の日本メディア相手の記者会見で、ウルフ代理人が今オフFAになった筒香嘉智内野手(30=前ブルージェイズ)と有原航平投手(30=前レンジャーズ)のアップデート(現状報告)を行ったのも見逃せない。2人とも日本では確かな実績を積み上げた選手ではあるが、メジャーには定着できずに苦しんできた。それでもウルフ氏は今回のメディア対応中、筒香、有原が依然としてメジャーでのプレーを希望していることを明かしたのだった。

 「筒香はファイター。決意に満ちた若者だ。私は最高級のリスペクトを抱いている。多くの試練を経験してきたが、まだ諦めていない。彼に価値を示すだけのチャンスを与えるチームを探すつもり。彼は時間がかかることは分かっている。GM会議で話し合いが始まり、ウインターミーティングでもそれは続く。メジャー契約が得られることをみんな望んでいる。1月終わりまでにメジャー契約が見つからなかった場合、そこで話し合う」

 「有原からは先発としてメジャー契約を模索してほしいと頼まれた。メジャー契約のチャンスはあると思う。彼の望む、一年を通じて先発の機会を供給するチームを一生懸命探すつもりだ。右腕の手術や、今季は過去日本では経験のない先発とリリーフの両方で起用されたり、過去2年は難しかった。だから彼は先発で使ってくれるチームを望んでいる。リリーフでの契約、マイナー契約は現状ではおそらく考慮はしない。メジャー契約を探すことにベストを尽くす」

 そこでのウルフ氏の口ぶりから、彼らの来季の所属チーム探しが容易ではないことが伝わってくる。ともにケガに苦しんできたのは確かでも、渡米時と比べ、評価が下がったことは容易に想像できる。それでもウルフ氏は「私は諦めない」と力強く言い切った。

 ウルフ氏はジアンカルロ・スタントン(ヤンキース)、ノーラン・アレナド(カージナルス)らスター選手を担当し、このオフもエドウィン・ディアス(メッツ)がリリーフ投手史上最大の契約をゲットするのを助けたばかり。カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)で学士号、ロヨラ・ロースクール・ロサンゼルスで法学博士号を取得。現役時代の松井秀喜氏(元ヤンキース)のこともスタッフの一員としてサポートした。実際に話を聞いていても人間的な深みと説得力を感じさせ、常に紳士的なだけに今では多くの日本選手からの信頼を得るに至ったのも納得できる。

 そんなウルフ氏をもってしても、前述通り、筒香、有原のチーム探しはスムーズには進まないのかもしれない。逆に言えば、だからこそ代理人の手腕が問われるという見方もできる。今後、どのように交渉を進め、12月上旬のウインターミーティングで今度はどんなアップデートを届けてくれるか。敏腕代理人の動向と言葉に、しばらくは熱い注目が集まり続ける。(杉浦大介通信員)

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2022年11月23日のニュース