闘病のライバルに誓った一打 市西宮が見せた最後の粘り 「笑って終わる」の主将の目に涙
第104回全国高校野球選手権兵庫大会・2回戦 市西宮3―5夢野台 ( 2022年7月10日 姫路ウインク )
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3点を追う延長10回裏、1死一、二塁、市西宮の2番打者、長浜圭亮(3年)は打席に向かうとき「初めて音が聞こえてきたんです」と話し、自分でも驚いた。われに返ったのだ。「それまでは何も聞こえませんでした。集中していたと言うか、緊張していたのかもしれません」
スタンドではブラスバンドが応援曲を演奏し、チアガールが舞い、父母たちが拍手していた。そしてベンチ入りを外れた選手たちがいた。高校入学から3度目の夏だが、これまではコロナ禍で応援は自粛が強いられた。「初めての経験でした。こんなに応援してくれているんだと思いました」
カーブをひっぱたいた打球は三塁手のグラブを弾き、左前に抜けた。二塁走者が還り、1点を返した。「僕はふだん、勝負強いタイプではありません。あんな場面でも自分の力を出せずに終わることが多かった。でも今日は、あの応援が力をくれたのかもしれません」
応援席には「一番仲が良かった」という木ノ元祐成(3年)がいた。最前列で大太鼓をたたいていた。
西宮・瓦木中時代、長浜が三塁、木ノ元が二塁を守るチームメート。高校では同じ二塁を争うライバルとなった。ただ、木ノ元は高校入学後、腎臓疾患で入退院を繰り返し、満足に練習ができなかった。「それでも木ノ元は必死で、本気で二塁のレギュラーを奪いにきていました」
6月25日午前の開会式。長浜は背番号「4」、木ノ元は「14」を背負って行進した。同日午後、開かれた壮行会。長浜は「木ノ元と最後まで一緒にやれたのが一番うれしい」、木ノ元は「5月にも入院してギリギリ間に合った」と話した。
だが、この日の初戦、木ノ元はベンチを外れ、スタンドでの応援に回った。長浜は心に誓っていた。「木ノ元がどこにいるのか分かりませんでした。あえて見ないようにしていました。でも、ずっと悔しい思いをしてきた木ノ元に見られて恥ずかしいプレーはできないぞと自分に言い聞かせていました」
6回裏、一時勝ち越しとなるセーフティースクイズ(三塁前内野安打)を決め、10回裏に左前適時打。木ノ元は精いっぱい太鼓をたたき、喜びを表していた。
試合は2度リードを奪いながら守備の乱れから追いつかれ、10回表も守備のミスから3点を失った。その裏、長浜適時打の後も1死満塁と迫ったが、4、5番の3年生が凡退して万事休した。
敗戦後、主将の鹿嶋朔人(3年)は「笑って終わろう、と決めていましたから」と赤い目で涙をこらえていた。1、2年時、夏の敗戦を終えた3年生たちが涙にくれるのを見て「泣くと下級生がつらい思いをする」からだった。「いいチームでした。3年は個性的なヤツばかりで、まとめるのは簡単じゃなかったけど、楽しくやり通せました」と笑ってみせた。
しかし、球場の外に出て、応援団や父母会を前に最後のあいさつとなると涙腺が決壊した。病気やけがと闘った者、退部を考えた者……選手14人に女子マネジャーの15人。自分で話しながら、思い出がよみがえり、涙があふれ出た。
県内有数の進学校。敗戦後は受験勉強に切り替えねばならない。鹿嶋は「野球は続けます。まだやれると思っています」と、2年先輩の太田薫がいる神戸大で野球を続けるという目標がある。
重松清の短編小説『終わりの後の始まりの前に』=『季節風 夏』(文春文庫)所収=で、主人公は3年夏の地方大会で見逃し三振に倒れ、最後の打者となる。夏休みに時間をもてあまし、足が向いた球場で最後の判定をした球審に出くわす。
「残酷だよな」と審判員が語りかける。「負ける学校を決めることが俺たちのいちばんの仕事なんだよ」。壮大なトーナメント戦は全国優勝校を除き、誰もが等しく一度敗れて終わる。「でもなあ……悔しさや後悔のなんにもない人生っていうのも、それはそれで寂しいんじゃないかって、俺は思うけどなあ……」
そう、野球は人生に似ている。失敗、敗戦、悔恨を乗り越えて次に進まねばならない。「終わり」の後に「始まり」が待っている。(内田 雅也)
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