NPB15人輩出のロッテジュニアの秘密「大事なのは野球に前向きな気持ち」

[ 2021年12月28日 05:30 ]

笑顔でエチェバリアのポーズを決めるロッテジュニアナイン
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 「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2021」が、28日に開幕する。過去16大会で69選手がNPB入り。中でもロッテJrは、今秋ドラフトで楽天1位の吉野創士外野手(18=昌平)、ロッテ2位の池田来翔内野手(22=国士舘大)、日本ハム2位の有薗直輝内野手(18=千葉学芸)の3人を含め、12球団最多の15人(育成含む)を輩出している。その発掘力と育成法に迫る。 (君島 圭介)

 近藤(現日本ハム)、及川(現阪神)らを輩出したロッテJrは、勝つための選抜をしない。本拠地の千葉県を中心に毎年約600人の応募者から1次選考の体力、2次選考の技術、最終選考の実戦で16人程度に絞る。その際、重視するのは体のバランスだ。

 元ロッテ外野手で、ジュニア育成を統括する武藤一邦ベースボールアカデミー校長(62)は「肩が強い、足が速いだけでは選ばない。あとは複数のポジションが守れること」と説明した。偏りのない筋力はケガのリスクを減らし、2つ以上の守備位置をこなせれば試合出場の機会が増える。どちらも将来的に野球を続けるには有利な要素である。
 過去16大会で優勝は藤平(現楽天)、木沢(現ヤクルト)を擁した10年だけ。早熟より将来性を優先してきた。13年の及川は制球難でフォームも粗削りだった。完成度の高い候補者の中で目立った存在ではなかったが、武藤氏は「この子は化けるというにおいがした」と抜てきし、勘が的中。ロッテJrでは控え投手だった及川は、のちにU15の日本代表に選ばれ、横浜高のエースを経て、現在は阪神のブルペンに欠かせない左腕へと成長した。今秋ドラフト指名された吉野、有薗もレギュラーではなかった。

 ジュニアチームの活動期間は約4カ月。技術指導よりも、異なる環境のチームから集まってきた個々の選手に応じたメンタル面の成長を促す。

 中には勝敗の責任という重圧につぶれかけている選手もいる。11年から7年間、監督も務めた武藤氏は「負けは俺のせいでお前のせいじゃない」と伝えた。過去の試合で、失策した選手がうつむいて「僕、交代ですか?」と聞いてきた。「エラーしたくらいで代えるわけないだろ。打ってこい」と声を掛けると、うれしそうな顔で安打を放った。武藤氏は「大事なのは野球に前向きな気持ち」という。

 伸びしろのある子を集め、もっと野球を好きにして送り出す。ロッテJrで芽吹いた素質が、日本中で大輪の花を咲かせる理由だ。

 ◇武藤 一邦(むとう・かずくに)1959年(昭34)1月20日生まれ、秋田県出身の62歳。秋田商では甲子園に2度出場。法大では東京六大学リーグで首位打者1回、ベストナイン2回。80年ドラフト2位でロッテ入りし、82年にイースタン・リーグ首位打者。88年限りで現役を引退。通算77試合出場で打率.123、1本塁打、4打点。08年にマリーンズアカデミーのコーチに就任し、現在は校長を務める。

 ▽NPB12球団ジュニアトーナメント 日本野球機構(NPB)主催で、各球団の本拠地を中心に選抜した小学5、6年生で構成するジュニアチームの大会。05年から毎年開催され、西武・森(オリックスJr)、楽天・松井(横浜=現DeNA=Jr)、中日・根尾(中日Jr)らを輩出した。今年は12月28~30日に神宮と横浜スタジアムで開催される。

 《U15代表大阪桐蔭・海老根、“二刀流”日大豊山・光永ら出身の高校球児にも期待》今後が期待されるロッテJr出身選手は多い。今年の明治神宮大会を初制覇した大阪桐蔭の主軸で、U15日本代表でも活躍した海老根優大(2年)は注目の強打者だ。日大豊山の光永翔音(1年)は1メートル89の長身。競泳では24年パリ五輪代表候補の逸材で、野球部にも所属して甲子園を目指す「二刀流」の活躍を続けている。

 《千葉出身選手4人に1人》今年2月時点でNPB支配下登録選手の都道府県別の出身地はオリックスの本拠地・大阪が65人で最多。ロッテの本拠地・千葉は4位の44人だった。今季プレーしたロッテJr選手は10人で、約4人に1人が出身者ということになる。12球団の本拠地以外では、沖縄が18人、京都は17人、静岡、岡山が16人、茨城、群馬、和歌山が15人の支配下登録選手を輩出している。

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