ヤクルト・奥川、初のCSでプロ初完封!屈辱KO1年前の初登板と同じ「11・10」に見せた驚異の成長

[ 2021年11月11日 05:30 ]

セCSファイナルS第1戦   ヤクルト4―0巨人 ( 2021年11月10日    神宮 )

<ヤ・巨>完封勝利を挙げ(右から)村上、中村と喜ぶ奥川(撮影・光山 貴大)
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 セのファイナルステージ第1戦は、1位のヤクルトが3位の巨人を4―0で下した。奥川恭伸投手(20)が6安打に抑え、大一番でプロ初完封を達成。レギュラーシーズンでは7回が最長だったが、98球で投げ抜いた。優勝したヤクルトに1勝のアドバンテージがあるため、これで日本シリーズまであと2勝とし、15年以来6年ぶりの同シリーズ進出へ力強く好発進した。

 「11月10日」の記憶を上書きした。同じ神宮での1軍デビュー戦で3回もたずに5失点KOされてから、ちょうど1年。最後の打者が放った中飛に後ろを振り返った奥川が、ポンとグラブを叩き両腕を突き上げた。

 「去年の今日は悔しい思いをした。凄く意識していました。何とか抑えたい。借りを返せたかなと思います」

 プロの洗礼を糧にした。昨季レギュラーシーズン最終戦だった11月10日の広島戦でのほろ苦い思い出。試合後のセレモニーでは高津監督から紹介され、戸惑いながらもマイクの前に立たされた右腕は恐縮しながら「来年活躍できるよう頑張ります」と約束。屈辱の投球動画を時折見返しては「やってやる」と己を奮い立たせてきた。

 「たった1試合でしたけど、今に生きている」と今季はチームトップ9勝を挙げるまでに急成長し、大事な初戦を託されるまでになった。最大のピンチは5回2死一、三塁。代打・八百板をフルカウントから外角低めの142キロ直球で見逃し三振。普段は感情を表に出さない右腕が、珍しく雄叫びを上げた。

 練習前、右翼付近にチーム一同を集めた高津監督が説いた。「僕たちは決して横綱ではない。やってはいけないのは、腰を引いて受け身になること。絶対、できる。大丈夫だよ、君らは絶対やると信じている」。シーズン中には「絶対大丈夫」の合言葉を生み出して鼓舞した指揮官の言葉に、「攻める気持ちで投げられた」と奥川。レギュラーシーズンでは7回が最長だったが、20歳6カ月でCS最年少完封し、球数はわずか98球。メジャー通算355勝で抜群の制球力から精密機械と呼ばれたグレグ・マダックスを由来に、大リーグでは通称「マダックス」と呼ばれる100球未満の完封を大一番でやってのけた。

 「初戦を投げると聞いたのは、凄く前だったけど、その時から緊張していた。大きな1勝。凄くホッとしている」。屈辱のプロ初黒星を喫した日は、栄光へと続くプロ初完封した日に変わった。(青森 正宣)

 ≪PO・CSセ投手初の“マダックス”≫奥川の20歳6カ月でのプレーオフ(PO)、CSでの初登板初先発初勝利は06年ダルビッシュ(日)の20歳1カ月、14年大谷(日)の20歳3カ月に次ぐ3番目の年少記録だが、完封勝利は奥川が最年少。日本シリーズでの最年少完封は67年堀内恒夫(巨)の19歳9カ月で、奥川はそれに次ぐポストシーズン年少2位となった。また、CSでの完封がプロ初完封は13年の岡本洋介(西)、菅野(巨)、美馬(楽=現ロ)に次ぎ4人目。この日の奥川の投球数は98球。PO、CSでの100球未満での9回完封は77年足立光宏(阪急=88球)以来44年ぶり2度目で、セでは初めてだ。

 ▼ヤクルト・高津監督 先にいい形で1勝できた。勝っても負けても奥川のゲームだと思っていた。最後まで投げ切るイメージはしていなかったが、どんどん勝負していった結果だと思う。なかなか言葉が見つからないくらいの成長。

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