【スポニチ潜入 大阪発(13)】滋賀学園・阿字 元日生投手の父と掲げた「夢」追う最速146キロ右腕

[ 2021年6月8日 09:00 ]

<滋賀学園・智弁学園>先発登板する滋賀学園・阿字(撮影・後藤 正志)
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 スポーツニッポン新聞社では、今年も企画「スポニチ潜入」でアマチュア野球の有力選手(高校、大学、社会人)を記事と動画で紹介します。大阪本社では「スポニチ潜入 大阪発」と題し、エリア内の有力選手を紙面、公式サイト「スポニチアネックス」、YouTube公式「スポニチチャンネル」において取り上げます。第13回は元日本生命投手の父との夢「プロ」を目指す最速146キロ右腕、滋賀学園・阿字悠真投手(17)です。

 11年前、大望を抱いて白球を握った。時に歯を食いしばりながらボールを追いかけた。そして今。高校野球ラストイヤーの阿字は改めて、「高校を卒業して、すぐにプロに行くというのが目標です」と言葉に力を込めた。

 しっかり右足1本で立った後、バランスよく体重移動しながら体全体で打者に向かっていくように腕を振る。最大の武器は球威抜群の最速146キロ直球。そして最大の魅力は、投げっぷりだ。持ち味の直球にスプリット、チェンジアップを織り交ぜ、打者をねじ伏せるのが投球スタイル。63キロという右手握力を駆使してリリースポイントで強烈なスピンをかける直球は、1年時に投球回転数を計測した際、すでに約2300回転とNPB平均値をたたきだしていた。全国的には無名だが、レベルの高い近畿地区でも、屈指の実力を誇る本格派右腕だ。

 親子で夢を追う。父・大作さんは習志野、東北福祉大をへて社会人野球の日本生命で、福留孝介(中日)、下山真二(元オリックス)らとともにプレーした投手だった。「尊敬しています」というその父は、小1で野球を始めてから中3まで所属チームのコーチでもあった。その教えは今も阿字の基礎となっている。

 「“キャッチボールからストレートの伸びを意識しろ”と教わってから、ずっとこだわってやっています。あと“投手は軸、体幹”というのを教わってからも、ずっと体幹を鍛える練習ばかりしていました」

 そんな父と掲げた目標がプロだ。「小学校の時から父と“プロに行く”と決めて野球をやってきました」。4歳の時に母・英美さんを亡くし、父と二人三脚で歩みを続けてきた。夢の実現こそが、最高の親孝行となる。

 昨秋と今春、2季連続で近畿大会出場の原動力となったが、ともに初戦で智弁学園の前に敗れた。特に必勝を期して臨んだ今春は4回11安打6失点と打ち込まれ、チームも0―15の大敗。投球回数を上回る6三振を奪いながら、悔しい結果に終わった。「ストレートで押せていたのにスプリットに頼りすぎたかなという反省があります。もうちょっと押せていれば…」。敗戦の反省を、さらなる進化の糧とする。

 父の現役時代の最速は145キロ。「1キロですが、抜きました」。今は最大の武器である直球にさらなる磨きをかけつつ、投球の幅を広げるべく、スライダー、カーブの精度向上にも取り組んでいる。某球団の関西担当スカウトも「フォームのバランスがよく、いいチェンジアップも持っている。将来性がある」と評価する逸材。目下の目標は「高卒プロ」。その実現へ向け、一心不乱に腕を振る。(文=惟任 貴信、動画撮影=井垣 忠夫)

 ◇阿字 悠真(あじ・ゆうま)2003年(平15)7月11日、大阪府出身。喜連小1年から「喜連若葉クラブ」で野球を始め投手。長吉西中では「東住吉リトルシニア」に所属し投手。2年冬に関西選抜。滋賀学園では2年秋からエース。2年秋、3年春に近畿大会出場も、いずれも初戦で智弁学園に敗れる。50メートル走6秒3、遠投100メートル。最速146キロ。1メートル80、77キロ。右投げ右打ち。

 ※滋賀学園・阿字選手の動画は「スポニチチャンネル」において配信中です。

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