中畑清氏 東北の底力引き出す…楽天・石井監督のシナリオに期待

[ 2021年3月9日 05:45 ]

中畑清氏
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 【キヨシスタイル】あと2日で3・11。東日本大震災から10年になる。これだけ時間がたっても、悲しいことに完全復興には程遠い現状。特に原発事故を抱える我が故郷の福島県では今も多くの人が避難生活を強いられ、風評被害に苦しんでいる。

 加えて世界中にまん延するコロナ禍の中で、どうやって復興のギアを上げていくか。またスポーツ、野球の力が欲しい。一球団に押しつけるようで申し訳ないけど、東北楽天ゴールデンイーグルスに期待したくなっちゃうんだよね。

 2011年4月2日、復興支援の慈善イベントとして行われた日本ハム―楽天戦(札幌ドーム)の試合前、楽天の嶋基宏選手会長(現ヤクルト)が発したメッセージが忘れられない。

 「見せましょう、野球の底力を!」

 4月29日、Kスタ宮城(現楽天生命パーク)での本拠地開幕戦ではスタンドに向かって「絶対に見せましょう、東北の底力を!」と呼びかけた。そして2年後の13年、被災地に初めてのリーグ優勝、日本一の歓喜、感動をもたらしたのだ。

 その後は6、6、5、3、6、3、4位と苦しい戦いを続けてきたけど、今年は空気が違う。

 13年に24勝0敗というとてつもない成績を残した田中将大が8年ぶりに復帰。ドラフトでは石井一久GM兼監督が4球団が競合した早川隆久を引き当てた。MAX155キロの即戦力左腕。千葉県出身で、外房の実家が大震災で津波の被害を受けたという。これも運命的な何かを感じる。

 昨季11勝で最多勝に輝いた涌井、岸、則本昂に田中将と早川が加わって先発5枚が確定。あと1枚は現状では2年目の滝中が有力らしい。リリーフ陣は抑えに戻る松井にブセニッツ、牧田…。投手陣が充実し、浅村を中心として昨季リーグ1位のチーム打率・258、557得点をマークした打線もいける。

 役者がそろい、舞台は整った。あとは、どう演出し、ソフトバンクという巨大な壁を乗り越えていくか。GMとして浅村、鈴木大、ドラフトで小深田、早川らを獲得してきた石井監督。野球の、そして東北の底力を引き出すシナリオを楽しみにしたい。(スポニチ本紙評論家・中畑 清)

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