【惜別球人】広島・平岡 新庄氏と真っ向勝負で己に勝てた

[ 2020年12月29日 05:30 ]

12月7日の12球団合同トライアウトで力投する平岡
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 出会いもあれば、別れもある。球界は別離と、新たな旅立ちの季節だ。楽天からドラフト1位で指名された155キロ左腕・早川隆久投手(22=早大)ら、育成選手も含めて新たに123人がプロの門を叩く。一方で、多くの選手がユニホームを脱ぎ、次なる人生をスタートさせる。年末恒例の「惜別球人」。今年は上下2回に分け、第1回はセ・リーグ編。

 人生の分岐点でこれ以上ない注目を浴びていた。平岡は12月7日の12球団合同トライアウトに参加すると、現役復帰を目指す新庄剛志氏の1打席目の対戦投手となった。「対戦できるとは思っていなかった。楽しんで投げられたのは、今までにはない感覚でした」。初球の143キロ直球で二ゴロに抑えた。

 重圧に苦しんできた。プロ3年間で1軍登板はおろか昇格さえできなかった。ブルペンで計測する150キロ超の剛球を実戦で体現できない。「打たれたらどうしよう…とか気持ちの部分ですかね。ブルペンで調子が良くても、実戦で同じような気持ちの持ち方をできなかった」。先輩の中田から「おまえの球を投げたら絶対に打たれないから」と背中を押され中部学院大の先輩でもある野間と床田からも「自信を持って投げろ」と言われ続けた。「僕に自信をつけさせようといろんな人に声を掛けてもらって、その言葉を信じて頑張ろうと思えた」。新庄氏との対戦で、これまでの弱気に打ち勝ったのが集大成だ。

 他球団からのオファーはなく、来年1月から一般企業に就職する。「プロになれて良かった。誰もが経験できる世界ではない。いい人生経験になりました」。ユニホームを脱いでも、身につけたたくましさは消えない。(河合 洋介)

 ◆平岡 敬人(ひらおか・たかと)1995年(平7)8月6日生まれ、兵庫県出身の25歳。育英では3年夏に兵庫大会準決勝で敗れ、甲子園出場なし。中部学院大ではリーグ戦通算3勝。17年ドラフト6位で広島に入団したが、1軍登板なし。1メートル86、95キロ。右投げ右打ち。

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2020年12月29日のニュース