中畑清氏 コロナ禍で痛感したスポーツの持つ力「来年もスポーツが明日への活力に」

[ 2020年12月29日 05:30 ]

中畑清氏
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 【キヨシスタイル】コロナ禍。映画で見るような暗黒の世界が現実になるなんて、思いも寄らなかった。人間がこれから先、生き延びていくために何が必要か。2020年はそれを学ばせてもらう一年だったような気がする。

 痛感したのはスポーツの持つ力だ。先陣を切ったのが野球。まずプロ野球が6月に無観客で開幕した。非難の声もあったけど、万全の感染防止対策を実施して観客を5000人、収容人員の半分と増やしていったよね。

 高校野球もそう。センバツも夏の甲子園も中止になったけど、センバツ出場予定校が夏に交流試合という形で1試合ずつ甲子園の土を踏んだ。大学野球も試合数を減らしながら秋のリーグ戦を実施した。

 「できない」と決めつけるのは簡単だ。でもそれじゃあ前に進めない。どうしたらできるか。知恵を絞り、工夫すればやれるのを実証した。そのノウハウが他のスポーツにも伝わったよね。

 12月だけでも勇気や元気をもらえるシーンがたくさんあった。24分間に及ぶ死闘を制して東京五輪66キロ級代表をつかんだ柔道の阿部一二三。鉄棒一本に絞って全日本選手権で優勝した内村航平。ともに圧巻の演技で優勝したフィギュアスケートの羽生結弦と紀平梨花。復活優勝を決めたバドミントンの桃田賢斗…。

 練習もままならないコロナ下で、前向きに心と体を鍛え、技を磨いた結果。多くのスポーツファンに明日への活力を与えてくれた。

 年が明けたらすぐサッカー、駅伝、ラグビーなど楽しみなスポーツが待っている。その先にあるのが1年延期された東京五輪・パラリンピック。変異種が生まれるなどコロナウイルスの先行きは不透明だけど、この平和の祭典は絶対に成功させなきゃいけない。

 その意味ではプロ野球がまた大きな役割を持つね。3月26日に予定通り開幕できるか。お客さんをどのくらい入れられるか。五輪開催の道しるべになると思う。

 最後に、スポーツ観戦用のマスクを開発してもらえないかな。少々声を出しても飛沫(ひまつ)が飛ばないヤツ。アスリートは歓声でアドレナリンが噴き出し、それがパフォーマンスにつながるんだ。来年は思いっきり声を出して応援したいよ。(スポニチ本紙評論家・中畑 清)

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2020年12月29日のニュース