小さなまちでドラフト指名直後に見た広島・島内の心意気

[ 2020年12月20日 08:15 ]

ドラフト指名後に取材を受ける九州共立大・島内投手(現広島=左、福津市提供)
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 プロ野球の年間表彰式「NPB AWARDS 2020 supported by リポビタンD」が17日に開催された。ユニホーム姿と違い、スーツに身を包んだ選手の表情は穏やかで、オフシーズンを感じさせた。

 この時期は取材場所も、球場を回るシーズン中と異なる。筆者は3度、市役所を訪れた。ヤクルトにドラフト1位指名を受けた慶大の木沢尚文投手は地元の千葉・船橋市役所へ、都市対抗を制覇したHonda野球部は、合宿所のある埼玉・狭山市の市役所へ表敬訪問を行った。コロナ禍で暗いニュースが多い中、スポーツが地域に活気を与える姿にファインダーをのぞく顔もほころんだ。

 筆者は16年度から19年度まで福岡県福津市の職員を務めた。行政職の業務でプロ野球に関わった思い出が、一つだけある。スポーツ振興を担当していた18年の10月、地元の小中学校、高校で育った九州共立大の島内颯太郎投手が広島にドラフト2位指名を受けたというニュースが庁舎に届いた。

 人口約6万人の小さなまちから、プロ野球選手を輩出したという話題を届けるべく、ドラフト会議から約1週間後に広報職員と九共大の練習を訪れた。大学最高峰の舞台、明治神宮大会出場を控えており、「キャッチボール姿が撮影できれば」と臨んだが、島内投手はブルペン入りし、全力投球を披露した。リリースポイントの高さ、直球のホップ具合、威力で自らの高評価を実証するかのような熱投だった。40球を超えたくらいで、マウンドから「もう写真は撮れましたか?」とたずねる声が上がった。大舞台を控えた自らの調整より、他人に気を配る好青年だった。

 「自分の持ち味の直球を武器に、長く活躍したい」と未来を思い描いた右腕はプロ入り後、最速を152キロから157キロまで伸ばした。2年目の今年は38試合に登板し、1勝0敗で防御率4・54。37回2/3を投げて48奪三振と、高い三振奪取能力を見せ、開花への片りんをうかがわせた。来季はさらなる飛躍と、故郷への凱旋を期待したい。(記者コラム・柳内 遼平)

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