BC埼玉・辻 NPB復帰へ最後の挑戦 広島時代の恩師からの“財産”胸に

[ 2020年7月24日 09:00 ]

佐々岡監督から教わったカーブの握りを見せる辻投手(撮影・柳内 遼平)
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 メジャー通算388試合登板を誇り、13年にレッドソックスのワールドシリーズ制覇に貢献した田沢純一投手(34)が今月、ルートインBCリーグの埼玉に入団し、大きな話題を呼んだ。22日からチーム練習に合流。31日の栃木戦の登板に向け、調整を行っている。

 新たに加わった偉大なチームメートの一挙手一投足に熱視線を送る選手がいた。元広島でNPB復帰を目指し、埼玉で2年目を迎えた辻空投手(26)だ。「(田沢の加入は)ビッグニュースですよ。同じリリーフとして肩の作り方やトレーニング方法を教わりたいです」。目を輝かせる彼も田沢に負けないパワーアームだ。

 1メートル85、91キロの屈強な体から繰り出される辻の直球は最速154キロ。「毎試合150キロ以上が出ています。今が人生の中で一番速いと思います」。手応えを持つ直球にスプリットとスライダーを組み合わせ、三振を量産。24日現在、13回2/3で奪った三振は18だ。

 辻は12年に育成ドラフト1位で広島に入団。15年に支配下登録を勝ち取ると、17年の後半戦は2軍の抑えを任されるなど、期待の若手投手だった。しかし、故障により、あと一歩まで迫っていた1軍の舞台に届かなかった。「カープにいるときはトレーニングをやればやるほど良いと思っていました。休むことの大切さも理解していなかった」。ひたすら追い込んだことで肘と肩は体は悲鳴を上げた。18年は2軍戦2試合のみの登板に終わり、戦力外通告を受けた。

 それでも野球への情熱は消えない。「体が万全ならば、まだプロ野球選手としての力があるはず」。自らの思いを実証するかのように同年の合同トライアウトに参加し、150キロを計測。だが故障がちな右腕にNPB球団から声がかかることはなかった。

 19年シーズンは埼玉でプレーし、先発と救援で26試合に登板し、防御率3・96。数字以上の手応えを得た。「1年間、投げ続けられたのはプロ入り後初めてです。インナーマッスルの強化や肩、肘のストレッチを重点的に行った効果が出ました」。苦い経験を糧に成したフル稼働は「故障で退団した辻」というイメージを払拭するための実績になったはずだ。

 財産にしている球種がある。広島時代に当時の2軍投手コーチだった佐々岡真司監督から教わった縦のカーブだ。「今はリリーフなので、試合で使っていませんが、いつもキャッチボールで投げています。これ(カーブ)を投げると体を縦に回転する意識がつき、自分のフォームを安定させるキーになっています」と目を輝かせる。

 「NPB復帰への挑戦は今年が最後になります」と辻。残された時間は決して多くはない。BCリーグで進化を遂げた男が大舞台に戻れるか。注目したい。(記者コラム 柳内 遼平)

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