広島・野村 父の言葉で残留決めてから7カ月 決意の9年目が“開幕”

[ 2020年7月23日 05:30 ]

セ・リーグ   広島3-3阪神 ( 2020年7月22日    甲子園 )

<神・広(4)>広島先発の野村(撮影・北條 貴史)
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 広島・野村祐輔投手(31)が、22日の阪神戦で今季初登板初先発し、6回5安打1失点と好投した。9年目で自身初の開幕2軍という雪辱を果たそうと意地を見せ、低調な投手陣には光明となった。だが、救援陣がリリーフ失敗し、今季3度目の引き分け。5位・中日とは勝率2厘差で、7月16日以来の単独最下位に転落した。

 最下位再転落に、下を向くばかりではない。雨に打たれながら、凡打を積み重ねる野村の姿があった。今季初登板で6回1失点。「最低限、試合をつくることはできた」。低調だった投手陣を鼓舞するかのように、先発の仕事を示した。

 失点は、3回1死三塁からサンズに許した右中間への同点適時二塁打のみ。1与四球に抑えた持ち前の制球力に加えて、18アウト中12個を凡飛で奪うなど、140キロ前後の直球には切れがあった。

 「要所要所で決まってくれた球があった。タイミングを外す場面が何度かあったので、良かった。つながらずに、1失点で止められたのは大きかった」

 春季キャンプ中に右ふくらはぎを損傷。完治しても、1軍から声がかかったのは開幕から1カ月後だった。「まだまだ。これからです」。投壊に苦しむナインを思えば、1度の好投で満足感に満たされることはない。

 大卒8年目の昨季に国内フリーエージェント(FA)権の資格を取得。だが、人生の分岐点での何気ない一言で、進路が決まった。昨年10月17日。ドラフト会議当日は、実家に帰省していた。明大後輩の森下が単独指名での広島入団が決まり、父・武志さんが口を開いた。「お前は5月の段階で1位指名を公表してもらっていたからな」。森下の場合は、ドラフト前日のスカウト会議後に広島が指名を公表。同じドラフト1位でも入団までの経緯が違った。

 「そうだったな…と。カープには恩義があると改めて気付かされました」

 権利を行使すれば、他球団からのオファーはあっただろう。「条件を聞くと絶対に迷う。だから、最初から聞くつもりは、ありませんでした」。お金では計れない球団への恩義。ドラフト会議から9日後、野村は残留会見を開いた。

 そして、慰留してくれた佐々岡監督を支える1年間が始まった。指揮官からは「久々で緊張したと思うけど、次につながる投球だった」と評価を受けた。最下位からの逆襲には、経験のある投手、つまり野村の力が不可欠だ。(河合 洋介)

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2020年7月23日のニュース