藤浪「自分のために」野茂氏からの直言胸に

[ 2019年10月20日 10:39 ]

<フェニックスリーグ 神・日>試合後の野球教室で子どもたちとキャッチボールをする藤浪(撮影・坂田 高浩) 
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 東京ドームに乗り込み巨人に挑んだCSファイナルSを記者席から見て思い出したのは、初戦からの4連勝で下克上を果たした14年だ。その初戦を任され7回1失点の快投を見せたのが、高卒2年目の藤浪。5年経った今、背番号19がしびれる大一番に不在という事実に寂しさを覚えた。

 7年目の今季は、わずか1試合登板でキャリア初の未勝利。唯一の1軍登板だった8月1日の中日戦では4回1/31失点も8四死球と荒れた内容で降板し、近年の不振から脱する快投を見せられないまま終わってしまった。

 個人成績で唯一、こだわってきた投球回で言えば、今年も含めて3年連続の100回未満。結果がすべてのプロの世界で屈辱の数年間を過ごし16年に1億7000万だった年俸も今季は8400万(金額は推定)まで下がった。制球難を改善できす、投球フォームのマイナーチェンジも繰り返してきた期間は、周囲からは「迷走」と見られてしまう。そんな現状を本人はどう捉えているのか。1軍昇格が絶望的となった9月下旬、浮き沈みのない表情で言った。

 「0勝って本当に情けないことですけど…自分の中では意味のある1年だったと思いますし、そのためにも、今はこの1年を来年につなげないといけない、という思いです」

 強がりや、偽りはなかった。終わったことは仕方ない…という割り切りとも違う。失ったものよりも、苦しみ続けるこの数年間で得たもの、気付けたことの方が多かったからこそ、前へ踏み出せているように感じた。

 「自分のために野球をやればいい」。テーブル越しに向かい合ったレジェンドに言われたという。共通の知人を介し、野茂英雄氏と食事をする機会に恵まれ、パドレスの球団アドバイザーを務める同氏が来日した際には2人で何度か食事をともにする。まだ生まれたばかりの藤浪は、メジャーで旋風を巻き起こしたドジャースの背番号16を知らない。だからこそ、変に構えることなく、プロの先輩のの言葉に聞き入った。

 「野茂さんも若い時に“体が開いたり、ボールが抜けたりすることがあったから”と仰っていて。とにかく自分のためにと。言動とか、姿勢とかで示すのは、ベテランになってからでいいからと」

 高卒1年目からローテーションの中心を担い、10代から背負うものが多かった男にとって「自分のために」という言葉は、1つの「気づき」になったのかもしれない。プロ7年を終えてもまだ25歳だ。「これまで」より「これから」に視線を向ける。苦難の連続にも懸命に前進する姿に希望を見たい。(遠藤 礼)

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