「夢」を売る甲子園の野球グッズ――創業者の遺志継ぎ、シャープ産業が展示室
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【内田雅也の広角追球】甲子園の高校野球や阪神タイガースなどプロ野球商品を製造・販売するシャープ産業(本社=神戸市)が各種サンプルを展示するショースペースを開設することになり、27日、関係者への先行内覧会を開いた。開設は7月1日。要望があれば一般にも披露する。
本社ビル4階の会議室の壁を甲子園球場のイメージでレンガ調にするなど改装。人気商品の甲子園出場校ペナント、阪神応援の「Vメガホン」、タオル、キャップ、文具、日用品など、約400点を展示した。
ペナント第1号の1965(昭和40)年夏の大会名「第47回全国高校野球選手権大会」や同年優勝校「三池工(福岡)」の商品もあった。同社常務営業部長の板橋弘幸によると「この1枚ずつしか残っていない」という貴重品だった。「当時はすべて手作業でしたので、縁や文字の線にわずかなズレもあります。機械で作っている今とは異なる風合いもあります」と話した。
売れ残った商品は関係者に配布した後、すべて廃棄処分にしてきたそうだ。元甲子園球場長、阪神球団常務で同社社長の竹田邦夫は「ペナントに限らず、各商品を1点ずつでも保管しておけば良かったのでしょうが、昔はそんな余裕もなかったと思います」と話した。
同社にはもうないが、大切な思い出の品として、全国各地の家庭に残っていることだろう。
同社が甲子園球場で高校野球関連商品の販売を始めたのが1963年。56年以上にわたる商品数は「何千という数にのぼる。数え切れません」と把握できていない。
毎年、新商品を開発しており、近年では「神整備」として話題になったグラウンドキーパーの阪神園芸関連、高校野球アルプス席のブラスバンドやチアガール、応援団の商品も人気だという。
一昨年、イメージキャラクターとして「たまぎわ君」を考案し、ツイッターで発信している。
ショースペースの名称は「VGLAD」(ヴイグラッド)。同社創業者、初代社長・会長で2017年3月に他界した小林勝喜(かつき=当時89歳)の名前、勝(Victory)、喜(Glad)から名づけた。「スポーツの勝利と喜びは永遠の記念・宝物」とのコンセプトは同社理念の「夢を創造する。夢を売る」にも通じている。
小林が野球関連グッズの製造・販売を思い立ったのは1961(昭和36)年8月18日のことだった。神戸経済大(現神戸大)から山下汽船(現商船三井)に入社して13年目、34歳。事業本部の幹部として東京から関西出張に来ていた。
仕事を終え、甲子園に高校野球を観に行った。尾崎行雄の浪商(現大体大浪商)や柴田勲の法政二らが準々決勝を戦い、超満員だった。第4試合、桐蔭(和歌山)―福岡(岩手)戦の途中、帰りの列車の時間が来て席を立った。阪神甲子園駅で大歓声が聞こえ、球場を振り返った。「甲子園が夕日に真っ赤に燃えていました。あの時、思い立ったのです」
友人がよく「甲子園には土産品がない」と嘆いていた。あるのはカチワリとカレーライス。土産は神戸の瓦(かわら)せんべい、大阪の粟(あわ)おこしだった。
「戦後の野球人気は絶頂、人びとは娯楽に飢えていた。全国からこれだけ多くの人が集まって来る。記念品や土産品があれば必ず喜ばれる」
大阪駅から乗った寝台急行「銀河」の車中、「悪魔のささやきか天の啓示」のように「自分でやれ」と聞こえてきた。夢にまで出てきた。
63年4月に円満退社し、「高校野球記念品を作りたい」と日本高校野球連盟(高野連)にかけ合った。副会長(後の会長)・佐伯達夫とは山下汽船時代に米国渡航を見送るなど面識があった。「天皇」と呼ばれ絶大な影響力があった。「高校野球は教育の一環」が持論で反対かと思われた。ところが「そりゃ、いい案だ。すぐおやりないさい」とOKが出た。
ただし、佐伯は条件を付けた。「商品は教育に資するもの。粗悪品は売らない。暴利はむさぼらない」など。そして「絶対に途中でやめないことだ」。小林は「死んでもやります」と誓った。
公認を受けて商品を開発。妻が友人と内職で作っていた東京タワーや羽田空港のペナントを卸す会社があった。今もベストセラーの出場校名・校章入りの三角ペナントが生まれた。1枚150円で売った。工場は24時間操業で1日3000枚を作った。校名入りボールやタオル、教育面からノート、下敷きなどを売り出した。後に佐伯から「君が店を出してから入場者が増えている」と激励してもらった。
問題はプロ野球・阪神タイガース商品だった。親会社・阪神電鉄から販売許可が下りるまで1年半を要した。最後はオーナーで本社社長の野田誠三に直談判した。野田は「こんないい案をなぜもっと早くやらんのか」と、その場で担当役員を呼び、実現となった。
65年のことだ。家族経営だった会社を株式会社に改組し、現社名・シャープ産業とした。甲子園球場内に店舗(タイガースコーナー、高校野球コーナー)を開店した。まだ他球団に商品などなく、まさに野球グッズのパイオニアだった。
小林は新潟県中条町(現胎内市)生まれ。旧制新発田中(現新発田高)1年だった41年1月、神戸の兄のもとへ旅行した。甲子園球場を訪れ「度肝を抜かれた」。甲子園駅前に建っていた同郷・新潟県人の阪神電鉄初代社長、外山脩造(とやま・しゅうぞう)の銅像を見上げて以来、生涯阪神ファンで通した。
竹田は「野球応援にグッズは不可欠。日本の野球発展に貢献してきたと思います。小林会長は生前“多くの商品を展示する場所があれば……”と話しておられた。今回はその遺志を継いだことになります」と話した。
「生涯青春」がモットーだった小林は泉下で、自身が描いてきた「夢」が並ぶ空間を笑顔で見つめていることだろう。(編集委員) =敬称略=
◆内田 雅也(うちた・まさや) 1963(昭和38)年2月、和歌山市生まれ。6歳だった69年春のセンバツ、父親に連れられ、初めて甲子園球場に行った。土産は父の母校、向陽(和歌山)の三角ペナント。以来、観戦の度に必ず買い求め、勉強部屋の壁に掲げていた。桐蔭(和歌山)―慶大文学部から85年入社。大阪紙面で主に阪神を書くコラム『内田雅也の追球』は13年目を迎えている。
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