岩瀬氏がルーキーに贈った珠玉の言葉「ぬるま湯は今年だけ」「どこかで絶対に挫折はある」

[ 2019年1月19日 10:30 ]

新人選手にアドバイスを送る岩瀬氏(撮影・島崎忠彦)
Photo By スポニチ

 レジェンドは照れていた。11日、都内で行われた日本野球機構(NPB)の新人選手研修会。ルーキーの前で講演を行った元中日の岩瀬仁紀氏(44)は終了後、関係者に「何分だった?」と聞いた。予定は45分だったが、15分ほど早い約30分で終了。昨季限りで現役を引退した左腕は「俺も緊張したよ…」と照れ笑いを浮かべた。実直さと真面目さがにじみ出ていた30分。その言葉はレジェンドならではの説得力に満ちていた。

 演目は「先輩プロ野球選手からプロ野球の後輩へ」。現役生活20年で、前人未踏の1000試合登板を達成した岩瀬氏は真摯に、丁寧にルーキーたちに語りかけた。

 「1年目は球団はお客様扱いしてくれる。でも“ぬるま湯”は今年だけ。最初はちやほやされるけど、自分をしっかり持ってチャンスをものにしてほしい」

 自身は必殺スライダーを武器にプロの厳しい世界を駆け抜けた。

 「短所をうまくやろうとするより、長所を伸ばした方がこの世界ではやっていける」

 「試合に臨む上で一番大事なのは、いかに不安を取り除くか。そのためには自信。自分がやってきたことが武器になる」

 長い野球人生、決して順風満帆ではない。

 「どこかで絶対に挫折はある。どんなに活躍しても壁にぶつかるし、それをどう乗り越えるかで選手の技量は決まる」

 熱い言葉が次々と飛び出し、新人選手は熱心に聞き入った。

 自身は大学、社会人を経て中日に入団。20年間の太くて長いプロ野球人生を送った。

 「プロの世界はあっという間に終わる。自分も今、20年やった気がしない。一瞬一瞬、一日一日を大事にしてほしい。2〜3年先じゃなく、今を大切にしてほしい」

 「3年目ぐらいまではこの世界に慣れるより、必死についていく。若い頃は買ってでも苦しいことをやって、野球漬けでいてほしい」

 講演後は選手から質問も受け付けた。岩瀬氏同様に緊張していたのか、固くなった新人からはなかなか手が挙がらない。司会者は報道陣にも質問を促し、記者は「大事にしていた言葉」を聞いた。岩瀬氏の返事は「継続は力なり」だった。

 「難しいけど、継続することで力に変えると思って20年間やってきた」

 講演の時間は確かに短くなってしまったかも知れない。しかし、岩瀬氏は存在そのものに説得力がある。実直な人柄そのままの言葉は、未来をつかもうとするルーキーにとって宝物になったに違いない。(鈴木 勝巳)

続きを表示

2019年1月19日のニュース