至芸? DeNA・ロペス史上初の投手30人から1ホーマーずつ

[ 2017年12月29日 10:30 ]

10月1日の広島戦の1回1死一塁、広島・岡田から左越え30号2ランを放つDeNAのホセ・ロペス
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 【宮入徹の記録の風景】時代を反映した記録といえるかもしれない。DeNAのホセ・ロペス内野手(34)は今季30本塁打をマーク。シーズン30本以上は昨年の34本に次いで2年連続2度目だが、本塁打を放った投手は本数と同じ30人だった。つまり1人1本ずつ。08年に中日のタイロン・ウッズが34人から35本塁打(日本ハム・多田野数人のみ2本)した例はあるものの、シーズン30本塁打以上の打者で複数本塁打を記録した投手が0はロペスが史上初めてだった。

 今季両リーグの1軍公式戦登板投手は329人。10年刻みで50年さかのぼると07年288人、97年272人、87年204人、77年171人、67年169人。50年前の67年は今季のほぼ半数にしかならない。先発完投型の投手が減って、先発、中継ぎ、抑えと投手の分業化が進んだことがロペスの珍記録を生んだ背景にあるようだ。

 通算で200人以上の投手から本塁打した打者は(1)タフィー・ローズ228人(2)金本知憲226人(3)清原和博223人(3)山崎武司223人(5)阿部慎之助222人(6)中村剛也212人(7)小久保裕紀208人(7)小笠原道大208人(7)村田修一208人(10)アレックス・ラミレス205人。お気づきだと思うが、10人全て80年代後半以降に入団した打者で占められている。歴代1位、通算868本塁打の王貞治は本塁打した投手が183人、同2位657本塁打の野村克也は178人でともに200人に届かずに終わった。半面、王は62年に阪神の小山正明から7本塁打、野村は阪急の米田哲也から通算27本塁打と特定の投手から本塁打を量産。こうした記録は今後破られる可能性が極めて低い。

 ところで王の奪本塁打投手183人を最初に抜いたのが門田博光だ。もう30年以上も前の話になる。筆者は当時、公式スコアカードをもとに手書きで門田の本塁打明細表を作成していた。球場別、カウント別、走者別、方向別、投手別など項目ごとに分類。近い将来王の記録を抜くのでは、と密かに期待していた。そして、ダイエー在籍時の92年6月28日の日本ハム戦で西村基史から初本塁打。王を上回る184人の新記録を達成した。くしくも門田にとってこの一発がプロ生活最後のアーチとなった。

 その後、当時巨人の清原和博が03年5月18日の阪神戦で下柳剛、安藤優也からいずれも初アーチ。184、185人目とし門田を抜き歴代単独1位に立った。さらに05年4月14日の阪神戦では福原忍から本塁打し史上初の200人の大台に乗せた。清原は223人で打ち止めとなると、オリックスのタフィー・ローズが09年4月26日の日本ハム戦で榊原諒、谷元圭介と新顔2人を加え225人からアーチ。清原の記録を塗り替え228人まで伸ばした。

 前述した200人以上の投手から本塁打した打者10人のうち現役は阿部と村田(来季所属球団は未定)の2人だけ。阿部はトップのローズに6本差まで迫っており、来季中の記録更新が期待できそう。また、冒頭のロペスは来日5シーズンで本塁打した投手は80人に達した。来季はチーム20年ぶりのリーグ優勝とともに、100人切りにも注目したい。(敬称略、専門委員)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。本社制定の最優秀バッテリー賞の選考委員会には、第1回から27回連続で資料説明役として出席。

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