プロ野球監督“長期政権”の理由は…原、星野、栗山3氏に共通するもの

[ 2017年4月10日 10:00 ]

日本ハム・栗山監督
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 プロ野球担当として過去に何人もの監督を近くで取材した。短い年数で退任し、その後もお呼びが掛からない一方、在任中は長期政権で退団後もすぐに他球団から就任要請を受ける監督もいる。違いは何か?あくまで持論だが、長く同職を務める人物は私利私欲より球界やチームの発展を優先する思考が強いと思う。

 記者が取材した監督で代表的な人物は3人いる。まずは08年から3年間、巨人担当として取材した原監督だ。担当1年目で最大13ゲーム差を逆転したリーグ優勝を取材。しかし、同年オフに翌09年の「第2回 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の監督人選がもめた。水面下も含めさまざまな監督候補が挙がったが、まるで「爆弾ゲーム」のように決まらない。最終的に白羽の矢が立ったのが原監督。就任会見で不平不満を言葉や表情に出すことなく「野球界の未来のために引き受けた」と言った。結果はイチローらメジャーリーガーも含むタレント軍団をまとめ、見事に世界一連覇を成し遂げた。

 12年から14年は楽天担当で星野監督(現球団副会長)を取材した。常々「俺はいつ辞めてもいい」と話すなど同職に固執せず、コーチには「責任は俺が取る。好きにやれ」と言い続けた。13年に球団初のリーグ優勝と日本一を達成も、3年契約の1年目だった翌14年に最下位の責任を取って辞任。持病の腰痛の悪化も一因だったが「後進に道を譲る」という意味合いが大きかった。阪神の金本監督、巨人の高橋監督ら若い世代の監督就任を心から喜び「俺みたいなジジイがいつまでもプロ野球界に残っているようではダメ。どんどん若い人間が出てほしい」と口癖のように語っていた。

 現在、記者は日本ハム担当。就任6年目の栗山監督を取材している。開幕前の3月22日、プロ野球草創期の大投手、沢村栄治氏の故郷の伊勢で巨人とのオープン戦が行われた。試合前、地元メディアも含め多くの報道陣に囲まれた指揮官は言った。「偉大な先輩方が引き継いできたプロ野球を、さらに魅力あるものとして次の世代に渡さなければいけないと、改めて思ってます」。その言葉には一切の私情はない。

 今月5日にはプロ、アマ合同の侍ジャパン強化委員会が都内で開かれ、次期日本代表監督の選考などに関して話し合った。20年の東京五輪、21年のWBCでも指揮を執る可能性がある大役。野球界の未来を明るく照らせる人物であってほしい。(記者コラム・山田忠範)

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2017年4月10日のニュース