阪神・北條 G倒2発!甲子園では06年金本以来「体を回しただけ」

[ 2017年4月10日 09:00 ]

セ・リーグ   阪神4―3巨人 ( 2017年4月9日    甲子園 )

<神・巨>7回1死一塁、同点2ランを放ち、ガッツポーズをする北條
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 阪神は9日、全4得点を3本塁打で挙げ、巨人との伝統の一戦に逆転勝ちし、今季甲子園初勝利を飾った。

 高速回転で捉えた打球は一直線に左翼スタンドへ飛んでいく。全力疾走しながら打球の行方を追った北條は「いけーっ!」と叫んだ。着弾とともに突き上げた右拳が「苦悩」からの脱出を告げていた。

 「体が反応してくれました。打った瞬間は全然、分からなくて、体を回しただけだったと思う」

 本人も“解説不能”の一発は2点を追う7回だ。2ボール2ストライクから大竹寛の内角シュートに左肘をたたんで振り抜き、起死回生の同点2ラン。逆転を許し、意気消沈しかけたチームを蘇らせる一撃となった。

 「北條劇場」の始まりは2回だった。2死から高め直球を完ぺきに捉えた打球はバックスクリーン左に飛び込む先制の1号ソロ。光星学院(現八戸学院光星)3年時に出場した夏の甲子園で放った2打席連続のバックスクリーン弾を思わせる放物線に、4万6236人の観衆を集めた聖地が沸いた。筋力アップに取り組み始めた昨秋、「プロでも甲子園のバックスクリーンに打ってみたい」と密かに野望を明かした。有言実行の弾道に成長の跡が見えた。

 甲子園での巨人戦で1試合2本塁打したのは、現監督である金本が06年に放って以来。後に続いた教え子に、指揮官は「(2本目は)インサイドはこうやって打つんだよ、みたいにコンパクトに、肘をたたんで振って、非常に素晴らしい打撃」と褒め称えた。

 プロ入り後、初となる会心の1試合2発には「兄」としての意地もつまっていた。年明けの1月2日、大阪の実家で北條の怒声が響き渡った。「お前、何腐ってんねん!なめてるんか。お前は“俺も頑張ってる”と言うてるけど、それは周りが評価することや。結果を出すことが、どれだけ難しいことか分かってんのか!」。東海大の野球部に所属する弟・裕之が、野球に対して後ろ向きな発言を両親の前で繰り返していた。高校の後輩にもあたり甲子園出場と、同じ道を歩んできた。野球道具も定期的に送りサポートしてきた。一番の“応援者”だからこそ、下を向く姿が許せなかった。「新年、いきなり兄弟げんかしてしまいましたね。でも、あいつには頑張ってほしいんで」。

 兄も、開幕スタメンを勝ち取りながら、極度の不振に苦しみ、試合前まで打率・120に沈んでいた。「結果を出すことの難しさ」―。弟に言い放った言葉を痛感する日々。長いトンネルを抜け、ようやく光を見た。

 「1打席、1打席を大事にして、得点圏の場面でも打ちたい。これからも打ちまくって、チームの勝利に貢献したい」

 北條史也らしく鳴らした逆襲の号砲だった。(遠藤 礼)

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