藤浪 完投コイ倒 最後の最後で従来のフォームで「やっと良い感覚」

[ 2016年9月23日 05:30 ]

<広・神>4回2死一塁、二盗を試みた一走・鈴木を刺した梅野(左)と笑顔でタッチする藤浪

セ・リーグ 阪神4―1広島

(9月22日 マツダ)
 こんな頼もしい姿を見たかったんや。阪神・藤浪晋太郎投手(22)が、22日の広島戦で5安打1失点の完投で7勝目を挙げた。今季4敗を喫していたリーグ王者相手に今季7戦目でようやく初勝利。投球フォームを試行錯誤するなど苦悩したが、来季へ向けて手応えをつかんだ。

 藤浪の心は荒れていた。前回9月14日の広島戦(甲子園)で、今季の課題だった初回にまた2失点。ベンチに戻ると自身への怒り、悔しさがこみ上げてきていた。

 「また同じように初回に失点して…。何回同じことをしてるんやと。どうせ(首脳陣に)怒られるなら、語弊があるかもしれないですが“もうめちゃくちゃにしてやろう”と思ったんです。それで2回からフォームを以前のものに戻したら、まっすぐで押し込めましたし、自分の感覚的にはバッターが怖がっている感覚もあった。すごく遠回りしたんですけど、やっと気づけた部分でした」

 球宴明けから左足を上げた際にグラブとボールを離す新フォームを導入していたが、理想の球質に近づくことは容易でなかった。一体、何が正しいのか、どうやったら勝てるのか…。22歳は迷路にはまっていた。

 「鶴岡さんにも言われたんです」

 9月上旬、昨年バッテリーを組んで相性がよかった先輩捕手に「晋太郎、前からそんなフォームやったか?前の方が良いんちゃうか」と言われた。グラブを打者方向に押し込むように間を取って、腕を振る従来のフォームへの原点回帰で、“生き返った”。

 あれから8日。完全復活を遂げた藤浪が、敵地・広島のマウンドに立っていた。序盤からテンポ良くアウトを重ね、2点リードの7回2死一、三塁の唯一のピンチで迎えた代打・新井には、直球を投げこみ、三邪飛。前回登板では球団史上初となる160キロをマークした球速は最速153キロ止まりでも、右手には確かな手応えが残っていた。

 「あの場面、直球が指にかかってる感覚もあった。自信があったんで、直球で勝負した」

 4回2死一塁では鈴木の二盗を梅野が刺した。今季、広島戦では15企図され、ようやく3個目のアウト。苦しめられてきた機動力をバッテリーで封じると、失点は9回に浴びた鈴木のソロ1本に抑え、137球を投げ抜いた。チームの順位が未確定ならば、30日の巨人戦(甲子園)で先発する可能性もあるが、シーズン最終登板を意識した締めの言葉を口にした。

 「(今回が)最後かははっきりしないですが、良いイメージで終われて、シーズン序盤、中盤にこういう投球をできれば良かったですけど。遠回りしたけど、やっと良い感覚が出てきた」

 もう迷いはない。藤浪が、一つ壁を越えた。 (遠藤 礼)

 ▼阪神・香田投手コーチ (藤浪について)良いところで三振を取れていた。力で押しているなと。(今後の先発機会の可能性は)ゼロじゃない。順位が決まれば(望月ら)可能性のある投手を投げさせる考えもあるし、そうでなければ晋太郎の力を借りることもある。

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