若返りで方向転換?ヤンキース 史上初FA補強ゼロとなるか

[ 2016年2月1日 09:00 ]

ヤンキースがレッズから獲得したチャプマン(AP)

 ヤンキースのこのオフの補強策が、例年とは違った形で注目を集めている。最速105マイル(約169キロ)を誇る左腕チャプマン、メジャーデビュー2年目の11年に年間207安打を放った右の好打者カストロをいずれもトレードで補強し、救援陣と内野の効果的な補強に成功した。だが、これまで豊富な資金力でFA市場で存在感を示してきた名門が、何とこのオフはここまで(1日現在)メジャー契約を結んだFA補強はゼロ。これは全30球団で唯一だ。

 大リーグでFA制度が始まったのは1975年。複数の米メディアによると、ヤ軍がこのままメジャー契約でFA選手を獲得しなければ、FA制度が始まってから史上初の出来事だという。これを受け、地元紙ニューアーク・スターレジャー(電子版)は「かつて最も退屈なオフシーズンか」、CBSスポーツは「果てしなく金遣いの荒い球団がここまで誰とも(FAで)メジャー契約を結んでいない」などと驚きの声が上がっている。これに対し、ブライアン・キャッシュマンGMは「われわれは全ての手段を調査し、トレード市場という決断を下しただけだ」と説明したが、ハル・スタインブレナー共同オーナーや同GMの意向で長期契約を避ける方針に転換しているという。

 2年前のオフにはエルズベリー、ベルトラン、マキャンと大物FA選手を次々と獲得。ポスティングシステムで獲得した田中を含めれば総額5億ドル(約605億円)の大型補強だった。それが昨年のオフから次第に方針転換。昨年は内野手のドルーをFAで獲得したが、年俸500万ドル(約6億円)の1年契約だった。同オフに引退したデレク・ジーター氏の抜けた穴にはトレードで獲得したグリゴリアスが入り、同じくトレードで加入した右腕イオバルディも昨季は14勝(3敗)と先発陣を支えた。昨季メジャーデビューした右腕セベリーノ、内野手バードやレフスナイダーらの有望株は、マイナーからの昇格組。徐々にチームが若返りつつある。

 38歳のベルトラン、ともに35歳の一塁手テシェイラ、左腕サバシアはいずれも今季が契約最終年。40歳のロドリゲスも17年シーズン限りで契約が切れる。球団の顔だったジーター氏が引退したこともあり、方針転換するには最適のタイミングだったと思う。ベテランが並ぶヤ軍の攻撃は機動力が使えず、打力に頼るだけで作戦面でもバリエーションが乏しかった。長期契約の弊害で、チームの新陳代謝が悪かったのが1つの要因だと思う。この反省を生かし、この先どのようにチームが生まれ変わっていくかが楽しみだ。

 1日の日本のキャンプインから遅れて、ヤンキースはバッテリー組が19日(日本時間同日深夜)、野手組は25日(同深夜)から始動する。エースになった田中の動向はもちろん、将来のヤ軍を背負って立つ逸材にも目を光らせてキャンプ取材にあたりたい。(記者コラム・東尾 洋樹)

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2016年2月1日のニュース