真っ直ぐな瞳に感動…ハム担当記者が見た高梨と大谷が持つ「強さ」

[ 2016年1月27日 08:20 ]

プロ野球日本ハムの大谷翔平(左)と女子スキージャンプの高梨沙羅

 1月16日。札幌・宮の森ジャンプ競技場。W杯ジャンプ女子個人第5戦で高梨沙羅を初めて取材した。氷点下の中、たくさんのファンが詰めかけて、旗を振り、チアホーンを吹き鳴らす。次々とダイナミックなジャンプを繰り返す女子選手たち。普段、プロ野球の日本ハムを担当する私にとって全てが新鮮だった。

 試技が終わり、いよいよ本番。個人総合1位で最終滑走の高梨は1回目97メートルでトップに立つと、2回目はさらに飛んで最長不倒の98メートル。淡々と、あっさりと勝利を決めてしまう姿にあっけにとられた。試合後も堂々としたもので、共同記者会見が終わると、雪が舞う外に出てテレビ用会見。最後は新聞記者向けの囲み取材に応じた。「地元の応援を自分の力に変えることができた。温かみを感じた。寒い中、足を運んでいただき、この人たちを楽しませるためにいいジャンプを飛びたいと思った。勝ちたかった。安心しました」。自分の言葉でゆっくり丁寧に話す。とても19歳とは思えない。

 高梨ほどの選手になると、囲み取材では360度を記者に囲まれる。それもほとんど男性だ。19歳の少女が自分よりも大柄な男性に囲まれるのはちょっとした恐怖だろう。それでも、高梨は質問されるたびに相手に体を向け、目を見て、きっちりと言葉の意図をくみ取ろうとしていた。私も普段のトレーニングについて質問させてもらったが、その真っすぐな瞳に感動すら覚えた。

 勝って当たり前の中で勝ち切る強さ。年齢は2つ上だが、同世代の日本ハム・大谷も同じ次元でプレーしている選手の一人と言えるだろう。団体競技で常に相手が存在する野球と、個人競技のスキージャンプでは根本的に違うが、2人は常にハイレベルなパフォーマンスが求められている。シーズン中、大谷は相手打線の対策についてコメントを求められると決まってこう言う。「相手どうこうは関係ない。自分の投球をしっかりやれば勝てる」。昨年11月の「プレミア12」ではその言葉通り、快投を演じた。高校時代2度の甲子園はいずれも初戦敗退し、3年夏は岩手大会で敗れ「大舞台に弱い」と言われた大谷だが、いよいよ殻を破ったように映る。

 高梨が連勝を飾った翌17日。テレビのゲスト解説で訪れた日本ハム・栗山監督は、高梨について「動きが本当にきれい。スローモーションに見えた。どこもバタつかない。強さと技術を感じた。野球にしても、良い打者ってそうだと思う」と感想を述べた。北海道が誇る2大スターは、自分のやるべきことをやり遂げる強い信念を持つ。目指す先はともに世界一だ。(記者コラム・柳原 直之)

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2016年1月27日のニュース