ヤクルト山田の覚醒(2)月、週単位の目標設定で前向きに

[ 2015年1月23日 11:40 ]

毎日行った早出でのティー打撃。山田は今年も継続すると決めている

 昨季開幕前、山田は杉村打撃コーチと数字の目標を立てた。180安打、20本塁打。そのために「月に30安打、1週間で7、8安打」と具体的に定めた。「引きずりやすかった」と話す一昨季までとは一転、この具体的な数値設定は山田に前向きさを与えた。

 象徴的だったのは真夏のマツダスタジアム。8月27日の広島戦は5打数無安打に終わったが、翌日、エース・前田健から3安打。杉村コーチは「5タコの翌日にマエケンだと“打てないな”となってしまうのが普通。3本打つ気持ちの強さに驚いた」と感嘆の声を上げた。「きょう打てなくても、あす打てばいい。そう考えられるようになったし、そうなると翌日こそ打ってやろうと思えるようになった。引きずらないようにしていました」と山田。精神面での大きな成長だった。

 一方、技術面ではティー打撃を毎日続けることを決めた。デーゲームでもビジターゲームでも欠かさず、早出で練習場に現れた。前の試合で崩されたフォームを正しく戻すこと、その日の投手の予習が狙い。左右にバットをX字に振り下ろしてからワンバウンドの球、バランスボールに座って左打ちなど計11種類からその日の体調に合ったものを選ぶ。1日15分程度だが継続は力となった。

 本塁打が飛躍的に増加したのも、このティー打撃の効果だ。過去3年間で4本塁打だったが、昨季だけで29本塁打。侍ジャパンの小久保監督にも「何を変えたんだ?」と聞かれたほどだった。それはバットスイングが速くなったこと、ヘッドを立てて打てるようになったこと、さらに広角に打てるようになったことが挙げられる。4月16日の巨人戦(神宮)で菅野から、プロで初めて右方向への本塁打。2軍戦でも打ったことがない逆方向への一発だった。ティー打撃で毎日、どのポイントでどの軌道で打てばどこに飛ぶか、基本練習を繰り返した成果だ。

 今季も1年間、ティー打撃を継続することを決めている。「全てに意味があるから、無駄なことをしていないと思えて頑張れるんです」。すでに杉村コーチにも意思を告げた。昨季序盤は「疲れた…」と弱音を吐いていた22歳に、強い決意がみなぎっている。

 テレビ出演やイベントなど、多忙なオフを過ごした。一躍時の人となったが、今季に向けて動きだしている山田はフッと息を吐く。「自信はないです。実はちょっと、今年開幕したくないんですよ、怖くて…」。まだ1年。そのことは誰よりも山田自身が理解している。本当の勝負はここからだ。

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2015年1月23日のニュース