ミスター・オクトーバーだ!大隣、虎も封じた7回無失点

[ 2014年10月29日 05:30 ]

<ソ・神>5回1死一塁、新井良を遊撃併殺打に打ち取り喜ぶ大隣と明石(左)

日本シリーズ第3戦 ソフトバンク5―1阪神

(10月28日 ヤフオクD)
 ヤフオクドームに舞台を移して行われ、ソフトバンクが阪神を5―1で下して2連勝を飾り、対戦成績を2勝1敗とした。初登板した大隣憲司投手(29)が、7回を3安打無失点に抑える快投。阪神・藤浪晋太郎投手(20)との投げ合いを制し、勝利投手になった。黄色じん帯骨化症の手術から復帰し、エース格になった左腕の活躍で3年ぶりの日本一にあと2勝となった。
【試合結果 日程&結果】

 指先から離れた白球が測ったように、ストライクゾーンの四隅を突く。大隣の制球力は、阪神打線を黙らせる唯一無二の武器だった。

 「外一辺倒では抑えられない。(内角に)突っ込むとこは突っ込んで、ボールにするところはボールにと、投げ分けられた」。4回、4番ゴメスとの2度目の対決。初球、内角にカーブを投げ、内角への意識を植え付けさせた。さらに3、4球目もスライダーで膝元を突くと、5球目は一転して外角高めへ。ゴメスは136キロ直球に振り遅れ、ファウルでカットするのが精いっぱいだった。

 1ボール2ストライク、勝負の6球目。緩急を使った。見送ればボールのチェンジアップを外角低めに沈め、空振り三振に仕留めた。7回まで許した安打はわずか3本。しかも全て単打で三塁すら踏ませず「自分の思ったようなピッチングができた」と胸を張った。

 全国放送がある日本シリーズ。「勇気を与えるような投球をするのが自分の役目」だった。昨年6月、国指定の難病・黄色じん帯骨化症の手術を受け、今年7月に復帰した左腕に一通の手紙が届いた。病魔と闘っている中学生の男の子からだった。「大隣さんが活躍する姿に励まされています」といった内容が書かれていた。男の子には自分だけでなく、同僚のサインも集めた色紙をプレゼントした。困難を乗り越える強さと勇気を、同じ苦しみを持つ人にも手にしてほしかった。

 同じ病気を克服したプロ野球の先輩にもマウンドからエールを送った。今季限りで巨人を戦力外となった越智も黄色じん帯骨化症の手術を12年に受けた。自身の手術前、元同僚だった杉内を通じ、執刀医の話などを聞いた。「(助言で)救われた自分がある。僕ももう少し(手術が)遅かったらどうなっていたか分からない」。その先輩は現役続行を希望し、トレーニングを続けている。

 中4日で登板した20日のCSファイナルS第6戦から体調を考慮され、中7日での先発。首脳陣の期待に応える好投を見せ、秋山監督は「立ち上がりから自分のピッチングがちゃんとできている。調整ができている。その辺が素晴らしい」と賛辞を惜しまなかった。

 優勝を懸けたリーグ最終戦の「10・2」、日本シリーズ進出を決めた「10・20」。絶対負けられないマウンドには必ず大隣がいた。第7戦までもつれ込めば、再び中4日での先発が予想される。「自分でもそのつもりでいますよ」。逆境を乗り越えた男は強く、どこまでも頼りになる。

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