広澤氏が分析 柳田に崩された藤浪のパターン 阪神“想定外”の連続

[ 2014年10月29日 11:18 ]

<ソ・神>初回、藤波から右翼線二塁打を放つ柳田

日本シリーズ第3戦 ソフトバンク5―1阪神

(10月28日 ヤフオクD)
 想定外の一打が阪神バッテリーを崩した。ソフトバンクが快勝したシリーズ第3戦。本紙評論家の広澤克実氏(52)は初回、ソフトバンクの1番・柳田が放った右翼線二塁打が阪神・藤浪攻略の全てと分析した。打ち取れるはずの左打者への内角スライダーを完璧に打たれたことで、藤浪の投球パターンが崩壊。対照的に大隣はシーズンと同じ投球パターンで7回無失点に封じた。1勝2敗とされた阪神は、流れを引き戻せるかが第4戦のポイントと指摘した。

 日本シリーズのような短期決戦は、いかにレギュラーシーズンと同じことをできるかが重要になる。その意味で、柳田の一打は、藤浪のシーズンの投球パターンを崩壊させる価値ある「想定外の一打」となった。

 ◆初回に先頭打者の柳田が1ボールからの2球目を右翼線二塁打 初球の152キロ直球が外れての2球目。藤浪が投じたのは内角へ鋭く食い込む136キロのスライダーだった。本人が「カットボール」というくらいスピードがある球。シーズン中、セ・リーグの左打者をこの球で詰まらせていた。藤浪にすれば、ある程度コースに決まれば打ち取れる球。それを柳田はものの見事に引っ張って二塁打にした。

 柳田はヘッドスピードが速く、パワーのある打撃が特長。ただ、こういう力のある1番打者はセにはいない。それどころか藤浪のあのスライダーをあそこまで引っ張れる左打者は両リーグ通じてもそうはいない。今季交流戦で4試合対戦したが、故障の内川の代役で出場していた柳田は中軸を打っていた。阪神バッテリーはどこまで柳田のパワーをインプットできていたか。この試合初めて投げた変化球、しかも左打者に打たれるはずのない球を打たれ藤浪は打ち取るパターンを崩される結果となった。

 1死三塁となって内川も外角のいいコースに来たスライダーを中越えに先制二塁打。シーズン中と同じパターンの投球ができなくなった藤浪は組み立てに苦しんで、6回途中で降板するまでに111球を費やした。ソフトバンク打線が松田、中村に当たりが出ず、打線のつながりを欠いていることも考えると、大きな先制パンチでもあり、柳田の一打が藤浪を降板に追い込んだといっていい。

 ◆シーズンと同じパターンで7回無失点に封じた大隣 直球とスライダーを軸に、阪神打線に対して利いていたのが要所で見せるチェンジアップだった。縦に鋭く落ちるこの球種を投げる左腕は、セにはあまりいない。巨人の内海、杉内もチェンジアップを使うが、ここまで鋭く落ちない。

 象徴的だったのは4回のゴメスだ。1ボール2ストライクからの126キロのチェンジアップを空振り三振。まるでフォークのような落ち方をしていた。ゴメスにとっては初めて見たボールで、全く対応できていない。ゴメスだけでなく、第2戦で好投した武田のカーブ同様、阪神打線は対応に苦しんでいた。いくらデータがあっても見たことがないボールはイメージできない。ただ、大隣にしたら、直球とスライダーで追い込んでチェンジアップというのは、シーズン中からやってきた投球パターンでもある。シーズンとは同じ投球ができなくなった藤浪とは対照的だった。

 CSファイナルSの第6戦に中4日で投げたことで、シリーズ第3戦先発となった大隣。ここで勝ったことで、あと1勝すれば第7戦に中4日で行ける。その意味でも大きな1勝だった。

 ◆想定外で流れを逃した阪神 藤浪と打線が苦しんだ想定外は、守備でもあった。2点ビハインドの6回2死満塁。内川の三ゴロを処理した西岡が一塁走者の封殺狙いで二塁へ送球して野選となり、手痛い3点目を失った。2死満塁で1ボール1ストライク。走者が走る場面ではない。緩いバウンドだったが、普通の走者だったら、二塁で封殺できる当たりだ。しかし、一塁走者は明石。西岡は右肘の不安もあって距離の短い二塁へ投げたのだと思うが、明石の足をどこまで想定していたか。

 野球は打つ、走る、投げるという見える部分以外に、運や流れ、勢いという見えないものが勝敗を左右する。短期決戦では特に大事な部分で阪神はミスから流れを手放してしまった。4回1死二塁から細川を三振に打ち取りながら、暴投で二塁から一挙生還を許した2点目もそう。ミスがなければ初回の1点だけで済んだはずだ。ただ、先発投手の質、量で上回る阪神。1勝2敗でもまだ五分五分と見る。ポイントはきょう29日の第4戦で失った流れをどう引き戻すかだろう。

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