「3時間30分ルール」で急増…引き分け数がVの行方握る?

[ 2011年4月19日 10:17 ]

16日の中日―阪神2回戦の電光掲示板。延長10回終了時に3時間26分経過だったため11回まで行われた

 東日本大震災の影響で今季特例措置として導入した「3時間30分ルール」。開幕から既に3試合で適用されるなど、引き分け試合数は急増中だ。この勢いだと、引き分け試合がペナントの行方を左右する重要な要素となるかもしれない。

 12日の開幕からわずか1週間で、その影響は如実に表れている。節電対策として導入された「3時間30分を過ぎて新しい延長回に入らない」という特例措置だ。ここまで両リーグ計34試合で4試合が引き分け。そのうち3試合が規定の最長12回まで到達せず、特例措置が適用された。

 全試合に対する引き分けの比率は11・8%。サンプルはまだ少ないものの、現時点では過去もっとも引き分けが多かった78年の9・4%を上回る数字だ。当時も時間による延長制限はあり、74~82年は両リーグとも3時間。引き分け率が高いのはほぼこの期間だ。当時は完投する投手が圧倒的に多く、平均試合時間は2時間台後半だった。

 今年の数字は1チーム144試合あたりに換算すると、実に年間17試合も引き分けとなる計算だ。88年以降、引き分け数が2桁のチームは両リーグで一度も出ていない。過去の最多は82年にセを制した中日の19試合だが、これを上回るチームが出てもおかしくない。

 果たして引き分け試合数の増加は、優勝争いに影響するだろうか。公式戦の順位はゲーム差を参考にすることが多いが、実際は勝率で決まる。上位争いをしているチームがゲーム差なしの状態なら、引き分け数が多いほど勝率が高くなる。

 2リーグ制後、引き分け試合数に差が出たことで、少ない勝利数で優勝したのは延べ8チーム。巨人は1度優勝があるが、最多勝利を収めながら優勝を逃した苦い経験が3度もある。逆に前出の82年中日は、全130試合の半分に満たない64勝で優勝している。ゲーム差が離れれば問題ないが、僅差の争いとなったとき、引き分けの多いチームが心理面で優位に立てそうだ。

 ≪采配にも影響≫時間制限の導入は終盤の采配に影響を及ぼす。16日の中日―阪神では1―1の10回、阪神の抑え藤川が登板。わずか12球で3者凡退に仕留めた時点ではリミット内の3時間26分。結局引き分けに持ち込んだが、久保田と小林宏も使い切っており、11回はあわやサヨナラ負けの危機を招いた。同様に延長突入した17日は11回への突入を見越して10回を任された福原が決勝点を与えた。藤川を起用できなかった真弓監督は「時間調整はできない。流れのままやるしかない」と話す。広島・野村監督は毎試合、ストップウオッチで時間を計っているという。3時間半の境目でベンチの試行錯誤が続きそうだ。

 ≪試合時間は大幅短縮≫3時間30分という延長制限は、実際に大幅な試合時間短縮につながっている。今季ここまで全試合の平均時間は、セ・パともに3時間5分。昨季と比べ10分以上の短縮につながっている。4時間を超えたのは、16日の中日―阪神戦(4時間2分、延長11回引き分け)の1試合だけだ。興味深いのは、9イニング試合での平均時間も昨季から10分以上短くなっている点。最短で9回引き分けの可能性もあるだけに、細かな継投が増えると考えられていたが、現状では時間短縮となっている。横浜ナインが全力疾走を徹底しているように、攻守や選手交代時の動きなど、選手が無意識のうちにスピードアップを心がけているのかもしれない。

 ≪統一球で?本塁打減少≫今季新たに導入された統一球は、低反発で飛距離が出ないため本塁打が減ると予想されている。ここまで両リーグ計34試合(12チームの試合数合計68)で、本塁打は60本。チーム1試合あたり0.88本(セ0.91本、パ0.85本)と、いずれも昨季からやや減少傾向にある。

 本塁打を打った顔ぶれは、5本のスレッジ(横)を筆頭に60本中22本、36.7%が外国人選手。昨季の同比率27.9%から急増しているのが目につく。また4本の中村(西)や2本のT―岡田(オ)ら本塁打王経験者、ともに2本の高橋(巨)や福浦(ロ)ら実績のあるベテランによる本塁打も目立っている。影響を吹き飛ばすのは圧倒的なパワーか、はたまたベテランの技術か。今後に注目したい。

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2011年4月19日のニュース