1366日ぶり!マー君“あの夏”以来の聖地白星

[ 2010年5月17日 06:00 ]

甲子園に“戻ってきた”楽天・田中は2回無死二塁、城島を中飛球に抑える

 【楽天7-3阪神】楽天の田中将大投手(21)が16日の阪神戦で7回5安打3失点、今季初の2ケタ奪三振となる10奪三振も記録し、チームトップの5勝目を挙げた。甲子園球場では駒大苫小牧時代の06年8月19日、夏の甲子園準決勝・智弁和歌山戦以来となる1366日ぶりの白星。数々の名勝負を繰り広げ、大会連覇も成し遂げた地で、直球とスライダーを軸とする本来の投球を取り戻した。打撃でもプロ初の適時打を放つなど、甲子園の主役として再び輝いた。

 里帰りで自分を取り戻した。高3夏の甲子園決勝では早実・斎藤(現早大)と延長15回引き分け再試合の死闘を繰り広げるなど、同世代のライバルたちとしのぎを削ったマウンド。多少改修されはしたが、記憶に違いはなかった。
 「マウンドからの景色は基本的に一緒だった。阪神ファンの応援はありましたけど“久しぶりだな”という思いが大半でした」
 初回、先頭のマートンを133キロのスライダーで見逃し三振に仕留めると、3番の鳥谷は146キロの直球で空振り三振。前回9日の日本ハム戦(函館)では、傾斜の少ないマウンドで自己ワーストタイの7失点。ずれた感覚も聖地で修正できた。高校時代に「捕手までの距離が近く感じる」と語ったマウンドは「今でも変わりない」という居心地の良い場所だった。
 駒大苫小牧時代の田中を支えたのは150キロの直球とスライダー。プロ入り後は、投球の幅を広げるためにチェンジアップや高速カーブなど数々の変化球を習得した。それでも投球の軸が直球とスライダーであることは変わらない。この日投じた93球中、直球とスライダーで計77球。全体の83%を占めた。9日の日本ハム戦の70%を大きく上回った。
 2点を失ってなお3回2死二塁のピンチでも、4番の新井に直球を5球連続投じ、最後は外角低めのスライダーで空振り三振を奪った。この日の最速は151キロ。今季最多の10三振を奪い「基本は直球とスライダーを軸にするスタイル。きょうは手応えを感じる内容だった」と、笑顔を浮かべた。打っても6回1死一、三塁で初球の直球を中前打。「甲子園でのタイムリーは何とも言えずうれしかった」。これがプロ初の適時打だった。
 テレビ朝日系列の名物番組「熱闘甲子園」の今年のポスターに松井(エンゼルス)、松坂(レッドソックス)と並んで採用されるなど、世代を超えた顔でもある。その一方で、当時の余韻に浸ることは好まない。忙しい中でも取材には協力的な田中も、甲子園に関するものは難色を示す。「過去を振り返ることは意味がない。プロでやっているわけですから」。思い出ではない。そのマウンドから道は続いている。
 取り戻したのは、高校時代の自分だ。「きょうはいい形で投げることができた。次につながる」。プロとしては3年ぶり2度目の登板だった聖地で、シンプルに投げ抜いた。その右腕が、4位に浮上したチームをさらに上位へ押し上げる。

 ▼恩師の香田誉士史・駒大苫小牧高野球部元監督(39=現鶴見大コーチ)高校時代死闘を繰り広げた場所であり、見える光景や忘れられないものがあると思う。勝ってよかった。原点ではないでしょうけど、気持ちの入り方も特別なものがあったのでは。今季はテレビなどで見て、何となくですがボールの走りとか、ちょっとよくないんじゃないかと思ったこともありましたが、これからもまた勝ってもらいたいです。

 ≪通算16度目の2ケタ奪三振≫田中(楽)が10三振を奪い7回3失点で今季5勝目。2ケタ奪三振は昨年9月18日ロッテ戦(10奪三振)以来通算16度目で自らの球団記録を更新した。この日は打っても6回中前に適時安打。自身打点は08年5月25日ヤクルト戦で遊ゴロの間に挙げて以来2打点目。安打でマークしたのは初めてだ。また、パの投手で2ケタ奪三振と適時安打を記録して勝ったのは松坂(西)が06年5月19日横浜戦(10奪三振、3打数1安打1打点)、6月9日阪神戦(14奪三振、4打数1安打2打点)に次いで4年ぶり2人目(3度目)だ。

 ◆田中と甲子園 駒大苫小牧2年春の1回戦が初登板。背番号10で戸畑を6安打1失点完投。同校にセンバツ初勝利をもたらした。同年夏は3回戦以降4試合に登板して3勝を挙げて夏連覇に貢献。3年春は部員の不祥事もあって出場を逃したが、中京商(現中京大中京)以来史上2校目の3連覇に挑んだ夏は6試合で4勝。早実との決勝は3回途中から登板して延長15回1―1の引き分け。再試合は初回途中から登板して3失点だった。通算12試合で8勝0敗。防御率2・07。

 ◆06年夏の甲子園 逆転ゲームが22試合、サヨナラ、延長がともに5試合、逆転サヨナラが4試合あった劇的な大会だった。駒大苫小牧も3回戦の青森山田戦で1―7から大逆転。準々決勝の帝京―智弁和歌山は7本塁打が飛び交った。9回表に4点を追う帝京が8点挙げて逆転もその裏、智弁和歌山が5点を挙げて逆転サヨナラ勝ちで最終回4点差逆転サヨナラは史上初。決勝戦は37年ぶりの延長引き分け再試合の末、早実が初優勝し、7試合948球を投げたエース斎藤は「ハンカチエース」として社会現象になった。田中、斎藤はじめ同年ドラフト指名された大嶺、ダース、堂上らが出場したほか2年生だった大阪桐蔭・中田(日本ハム)、仙台育英・佐藤(由規=ヤクルト)らも出場していた。

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