新人中沢4安打完封!打っても猛打ショー!

[ 2010年4月24日 06:00 ]

<横・ヤ>横浜を下し、ナインとハイタッチする中沢(右から2人目)と相川(右端)

 【ヤクルト4-0横浜】ツバメのマー君だって凄いんです。ヤクルトのドラフト1位左腕、中沢雅人投手(25)が23日、横浜打線をわずか4安打に抑えて、ルーキー完封一番乗り。2勝目をマークしただけでなく、打ってもプロ初安打を含む3安打で猛打賞を記録した。新人完封が球団史上16年ぶりなら、新人投手の猛打賞は72年の山本和行(阪神)以来38年ぶりの快挙。敗れれば5位転落の危機もあった中、甘~いマスクの新人左腕が、ドでかい仕事をやってのけた。

【試合結果


 見た目は草食系だが、ハートは鉄でできている。9回1死一塁。中沢は108球目でスレッジを二ゴロ併殺に打ち取り、ガッツポーズ…は出なかった。新人完封一番乗りにも、穏やかな笑顔をのぞかせただけだ。

 「ガッツポーズをする余裕はなかったです。こんなに早く完封できると思っていなかったので本当にうれしい」。今季2勝目の白星は球団16年ぶりの新人完封劇。25歳らしくヒーローインタビューは丁寧に答えたが、モゾモゾと動く足はルーキーそのものだった。

 だがマウンドでは堂々の投球。吐く息は白く、小雨にぬかるむ最低気温7度のマウンドにも全く動じない。直球は140キロに届かないが、武器である抜群の制球力と7色の変化球がさえた。序盤はカーブ、チェンジアップで横浜打線を幻惑。春季キャンプで宮本からアドバイスを受けて習得した真っスラも効果的に6回まで1安打に抑えた。生命線の制球力は最後まで乱れず、フルカウントは2度だけ。7回以降は中盤まで隠したスライダーで打ち取り、引き出しの多さも見せつけた。

 投げるだけじゃない。2回に中前へプロ初安打すると中前打、右前打と続けて「まぐれ。本当に奇跡です」と本人もびっくりの猛打賞。新人投手の猛打賞はプロ野球史上38年ぶり。完封に花を添え、お釣りが来るほどの快挙をやってのけた。

 エースで4番だった富山商でも高校通算わずか3本塁打。中大、トヨタ自動車はDH制採用で、ここ7年間は打席に入ったことすらなかった。プロ初登板の3月30日の中日戦(神宮)は3三振。「速すぎて打てない」と驚き、アシックス社へ「とにかく細くて軽いもの」とだけをリクエストして発注したバットが打ち出の小づちとなった。

 物静かで穏やかな性格で父・豊さんの「自分を大きく見せず、できることをきっちりやりなさい」という教えを守るが、トヨタ自動車からのプロ入り同期、ロッテ・荻野貴にはライバル心を燃やす。「あいつにだけは負けたくない」と意識しながら「投手と野手の間で結果を争うにはどうしたらいいのか」と首をひねっていたが、そんな心配も今回の快挙で一歩リードした格好だ。

 新人左腕の台頭は、ここ10試合で2勝7敗1分けと苦しんでいたチームにとっても光明だ。「まだ先は長い。勝利に貢献できるように頑張ります」。初々しい笑みをこぼした中沢のプロ野球人生は始まったばかりだ。

 ▼トヨタ自動車・川島勝司総監督 社会人時代は4、5回で少し気が緩むところがあって、そこが(続投させるか)見極めのポイントだったけど、プロに行って成長したんだろうね。3安打?社会人はDHだから練習もほとんどやらせたことないんだけど(笑い)。これが自信につながってくれればいいね。

 ≪快挙ずくめの中沢≫プロ初登板を先発勝利で飾った新人の中沢(ヤ)が完封で2連勝。ヤクルトの新人で完封勝利を挙げたのは94年7月6日中日戦の山部以来16年ぶり。またプロ初登板で白星は中沢がチーム10人目だが、2連勝以上したのは69年・藤原真の4連勝に次いで41年ぶり2人目。ただし、藤原の初勝利は救援で挙げたもの。いずれも先発で2連勝は球団史上初めてだ。打ってもこの日は3安打の固め打ち。新人投手の猛打賞は72年・山本和行(神)が7月20日広島戦でマークして以来。ヤクルトでは前記藤原が4月24日中日戦で3安打して以来こちらも41年ぶり。

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2010年4月24日のニュース