菊池、初体験に“生まれたての子鹿”状態

[ 2010年1月15日 06:00 ]

タイムトライアルを終えた菊池は悶絶の表情を浮かべる

 西武のドラフト1位左腕・菊池雄星投手(18=花巻東)が14日、埼玉県所沢市の西武園競輪場で行われた新人合同自主トレで1000メートルタイムトライアルに臨み、全体で2番目となる1分29秒16のタイムをマークした。練習では初体験となる競技用自転車の操作に苦しんだが、一発勝負となった本番で好結果を出すプロ根性を見せた。体の仕上がりは順調で、15日にブルペン入りすることになった。

 ゴール地点を通過した菊池は、自力で自転車から下りられなかった。スタッフの肩を借りて何とかバンクに立つと、真っすぐ歩くことができなくなっていた。息が上がったまま右足を押さえ、その場に倒れ込んだ。
 「どこが痛いのか分からなかった。体に力が入りませんでした。プルプルしていて、骨の芯から(痛みが)来ている感じです。トップを狙いたかったので悔しいです」
 花巻東ではサドルだけ盗まれた自転車で、立ちこぎの状態のまま35キロを走破した経験がある。だが、傾斜30度もある競輪場バンクはもちろん、競技用の自転車も初体験だった。タイムトライアル前の約20周の練習走行では、ハンドル操作やコーナリングに戸惑った。「ブレーキもないですし、予想以上に怖かった。いつ倒れるか分からなかった」。それでも本番では強い精神力で恐怖心を払った。「転んでもいいと思って開き直っていきました。野球でも怖がっていたらインコースに投げられないですから」。マウンドでの姿と同様、強気な攻めを見せた。
 大迫トレーニングコーチが01年オフに就任以来、9度目(新人は04年から)の競輪トレーニング。星が05年にマークした新人記録には約3秒遅れたが、新人時代の涌井も1分30秒を切れなかったことを考えれば、2位とはいえ1分29秒16は堂々の記録だ。同コーチは「苦しい中で自分の力を出し切った。立とうと思っても立てない状態になるのは初めて見たかな。生まれたての子鹿になってたね。出し切るタイプ。そういう一面が見られて良かった」と称えた。生涯獲得賞金は3億円を超え、現役競輪選手で西武園クラブ会長を務める田淵浩一も「頑張ったと思います。センスがありますね」と舌を巻いた。
 新人合同自主トレ初日には長距離走でトップタイムをマーク。この日は、非凡なスプリント力、適応能力に加え、一発勝負の舞台で実力を発揮するプロ根性も見せた。「徐々に慣れたので、いい経験ができました。野球に限らず、練習が大事なんだと思いました。体幹を鍛えるためにヨガとかもやってみたい」と菊池。どんなトレーニングでも野球につなげる思考力を持つルーキーが、日々成長を続けている。

 <新人記録保持者は星>西武の競輪トレは大迫トレーニングコーチが就任した01年オフ以来行われている。新人合同自主トレに導入されるようになったのが04年からで、過去の新人記録は05年、星の1分26秒25。松井稼(現アストロズ)が01年オフに記録した1分28秒の球団記録を更新した。翌06年に1分26秒76だった銀仁朗は、2年目の07年にも飛び入り参加。1分25秒04の球団記録を出した。ここ3年は1分30秒を切る選手はいなかったが、岡本と菊池は4年ぶりに1分30秒を切る好タイムだった。

 ◆菊池と自転車 昨年9月末、JR花巻東駅で通学用自転車のサドルを盗まれたが「立ちこぎで足の筋肉が鍛えられるかも」と菊池はそのまま乗って帰った。10月23日の花巻市民栄誉賞授賞式で司会者から「サドルなしの自転車に乗っているの?」と聞かれ「マスコミには鍛えるためと言ってあるが、本当は盗まれた」と暴露。その後サドルは返ってきたが「はやらせたかったけど無理でした」と本人も楽しんだ様子だった。

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2010年1月15日のニュース