イチロー“魔球”破りのバント安打

[ 2008年6月9日 06:00 ]

<レッドソックス・マリナーズ>3回無死一塁、バントヒットを決めるイチロー

 【マリナーズ3―11レッドソックス】マリナーズのイチロー外野手(34)が7日(日本時間8日)のレッドソックス戦で“秘技”を見せた。ここまで打率・182と苦手だったレ軍先発ウェークフィールドの“魔球”ナックルボールを絶妙なバント安打。第4打席では救援投手の160キロ近い速球を右前打するなど16試合ぶりの“猛打賞”で気を吐いた。だが、チームリーダーの奮起も実らず、チームは両リーグ最速で40敗目を喫した。

 球速100キロの直球をバントするのは、プロの選手なら誰でもできる。ところが、ボールが揺れ動くとなると、これは別次元。しかも、それを狙った場所に転がすとなると、神業に近い。
 「初めてやりました」。イチローが高度な技術を見せたのは、3回の第2打席だ。メジャーNo・1のナックルボーラーが投じた65マイル(約105キロ)の“魔球”を三塁線へ図ったようなセーフティーバントを決めた。意表を突かれ打球処理が遅れたウェークフィールドは「あの当たりで彼を一塁で刺すのは不可能」と脱帽するしかなかった。
 通算171勝を誇るウェークフィールドのナックルはバットに当てるのさえ難しい。2回に初めて対戦した城島は、バットとボールが50センチ以上も離れる大きなスイングで空振り三振。「なめてました。僕が生まれてあれほど離れた空振りはなかった。多分2メートルのバットで振っても当たらない」と証言したほどだ。
 イチローもこの試合前まで対戦成績は22打数4安打、打率・182と苦手にしていた。しかし、初回は投前へのボテボテのゴロながら、快足を飛ばして内野安打。3回のバント安打と合わせ、マルチ安打をマークした。
 攻略したのは魔球だけではない。8回には2番手ハンセンの97マイル(約156キロ)内角直球を右前打し、打率を3割目前の・295まで引き上げた。50キロ以上の球速差にも「戸惑い?それは素人的な発想だね。同じ打席で(2つの球種を)見ているわけじゃないから」と言い放った。前の打席の残像を消し去っての1試合3安打だ。
 ただ、前日の8―0大勝とは打って変わって試合後のクラブハウスは沈んだ。「雰囲気の差が激しい。すぐ調子にも乗るし、すぐ自信も失う。その中間が欲しい」。安打を重ねてもチームの勝利に直結しない。そんなもどかしさともイチローは戦っている。

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2008年6月9日のニュース