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こだわり旬の旅

【鹿児島&熊本】日本近代化の源を歩く…見えた薩摩の底力

[ 2016年1月6日 05:30 ]

英国人技師の宿舎だった「旧鹿児島紡績所技師館(異人館)」
Photo By スポニチ

 昨年7月に世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」。23カ所ある施設の中で、産業革命の先駆けとなった鹿児島県の旧集成館などと、熊本県の三角西港を巡った。国外の世界遺産のような派手さこそなかったが、日本の近代化の源となった事業の痕跡がそこここに。新年を迎え、新しい世界遺産に会いに出掛けてみてはいかが?

 九州新幹線鹿児島中央駅からバスで約30分。鹿児島市でまず訪ねたのが薩摩藩・島津家の別邸だった「仙巌園」(入場料1000円)。噴火活動が落ち着いた桜島を築山に錦江湾を池に見立てた庭園は雄大で、そばには「旧集成館」がある。

 集成館とは幕末、欧米列強のアジア進出に危機感を抱いた28代藩主・斉彬が、産業や軍備の近代化が急務と考えて推進した富国強兵と殖産興業の具体的事業。製鉄やガラス、陶器などの製造をはじめ、船舶の建造や武器製造、蒸気機関などの技術開発まで幅広く研究、製造を試みたという。

 同園内にある「反射炉跡」は大砲を製造するため高温で鉄を溶かした炉の跡。凝灰岩で造られた底部構造や基礎部の石積みが残されている。その先には「旧集成館機械工場」。凝灰岩で壁を造った日本最古の洋式石造機械工場で、使用した機械、機関類を整備補修。現在は博物館となっている。斜め向かいの「旧鹿児島紡績所技師館(異人館)」(同200円)は蒸気機関や紡績機械を稼働させるために招かれた英国人技師たちの宿舎。木造瓦葺きのコロニアル調デザインが目を引く。

 こうした産業に欠かせないのが動力。同駅からバスで約30分、下田停留場から徒歩約12分の「関吉の疎水溝」は吉野台地を流れるあべ木(あべは木へんに青)川の水を堰き止めて再整備した場所。約7キロの水路に取り込み勾配を駆け下りて水車を回し、仙巌園の生活用水に利用していたそうで、堰の痕跡と取水口跡にその名残が見える。また鹿児島県は石炭を産出しないためシイの木などの堅木を燃やして木炭を作っていたのが「寺山炭窯跡」(同駅からバスで約35分、三州原学園前停留所から徒歩約20分)。築造された3基のうちの1基で、凝灰岩で円形に組まれた壁面部が残っている。

 これらの世界遺産のほとんどが西洋の書物や在来の技術で独自に構築したもの。まさに日本の産業化の先駆けといってよく、先人たちの壮大なビジョンと努力に頭が下がる思いだった。

 ▽行かれる方へ 鹿児島空港からは車で約40分。問い合わせは鹿児島市世界文化遺産登録推進室=(電)099(216)1504、仙巌園・尚古集成館=(電)同(247)1551。

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