是枝裕和監督「真実」ベネチア映画祭OP作品も「最も意気込まない」「社会性や重厚さとは無縁」

[ 2019年8月27日 11:00 ]

最新作「真実」がベネチア国際映画祭コンペティション部門オープニング作品に選ばれた是枝裕和監督(中央)photo L. Champoussin(C)3B-分福-Mi Movies-FR3
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 昨年の第71回カンヌ国際映画祭で日本映画21年ぶりとなる最高賞“パルムドール”を「万引き家族」で受賞した是枝裕和監督(57)の最新作「真実」(日本公開10月11日)は、第76回ベネチア国際映画祭(8月28日~9月7日)のコンペティション部門オープニング作品としてワールドプレミア上映される。日本人の監督作品がオープニングに選ばれるのは史上初の快挙。是枝監督に渡伊直前の心境を尋ねた。

 「シェルブールの雨傘」「終電車」「8人の女たち」などの仏女優カトリーヌ・ドヌーヴ(75)、「ポンヌフの恋人」「イングリッシュ・ペイシェント」「ショコラ」などの仏女優ジュリエット・ビノシュ(55)、「トレーニング デイ」「6才のボクが、大人になるまで。」「ビフォア」シリーズなどの米俳優イーサン・ホーク(48)らをキャストに迎えた是枝監督初の国際共同製作映画。国民的大女優ファビエンヌ(ドヌーヴ)がつづった自伝本「真実」をめぐり、ニューヨークで脚本家をしている娘リュミール(ビノシュ)の間に隠された“ある真実”があらわになる…。撮影は昨年10月から2カ月、全編フランスで行われた。

 ベネチア映画祭は1995年、テレビのドキュメンタリー番組で活躍していた是枝監督の劇場映画デビュー作「幻の光」が「金のオゼッラ賞」を受賞。同年に開業した東京・渋谷のミニシアター「シネ・アミューズ」(2009年閉館)のこけら落とし作品にも選ばれ、スマッシュヒットを記録した。

 17年、福山雅治(50)主演の法廷サスペンス「三度目の殺人」が22年ぶりにコンペティション部門に出品され、凱旋。渡伊前、賞については「意気込んでいないのに意気込みと書かれるから、意気込まないと言うようにしています」と笑った後に「ただ、映画祭に対しては特別な思いはあります。やはり、ベネチアにはデビューさせてもらったというか、自分のキャリアのスタート。22年ぶりと随分、間が空きましたが、またベネチアに行けるというのは、とても感慨深いですね」と格別の感情を打ち明けた。

 そして、今回はパルムドール受賞後初作品とあり、さらに世界の注目が集まるが「今回、最も意気込まないですね」と再び笑いを誘った。「軽やかで、読後感のさわやかなものを作りたいと思って、それができたので。社会性や重厚さとは無縁の映画。正直コンペ向きだとも思っていませんし。コンペで賞を獲るような、勲章が必要な作品じゃないと思っているので、今回は本当に、賞はいいんじゃないかと」と、いつも以上に自然体。

 数々の国際映画祭に参加しているが、オープニングを飾るのは自身初という。「プレッシャー?ないですね。重圧があるのは、プロデューサーじゃないですか。カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュを連れてベネチアに行かないといけませんから。ギャガ(配給元)が大変なんじゃないですか」とリラックス。「キャストが華やかなので、オープニングに選んでいただいたのは本当にありがたいです」と2年ぶりのベネチア再訪を楽しみにしている。

 ベネチア映画祭の後は日本に戻らず、最高賞(観客賞)の選考対象となり、世界的な映画作家の作品を集めたスペシャル・プレゼンテーション部門に出品された第44回トロント国際映画祭(9月5~16日)に向かう。

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