独立局がももクロ生中継のワケ「キー局がマネしようもない番組」

[ 2013年4月8日 10:12 ]

4月13日の西武ドーム公演がテレビ埼玉ほか独立局で生中継される「ももいろクローバーZ」

テレビ埼玉・遠藤圭介プロデューサーに聞く(1)

 「ももいろクローバーZ」が4月13日に行う西武ドーム公演が、テレビ埼玉(テレ玉)ほかで生中継される。異例のライブ地上波生中継、しかも独立局によるオンエアは、なぜ実現したのか。番組を担当する同局・遠藤圭介プロデューサー(44)に聞いた。

 ――今回の生中継の企画はどこから生まれたのでしょうか?

 「これは、ももクロが所属するスターダストプロモーションさんのご厚意以外の何ものでもありません。今年に入って1月中旬ぐらいに『生放送できますか?』と、ももクロサイドからリクエストがありました。放送枠や技術的な問題などがクリアになれば可能です、とお答えしました。そもそも、テレ玉は西武ライオンズ戦を中継している関係で、西武ドームに中継機材が置いてあります。制作されたライブの映像を入手することができれば、あとはプロ野球中継と全く同じ形になるので、うちは生中継できます、と。さらに関西にも同時ネットしたいというのがももクロサイドの意向でした。同じ独立局の仲間にお声掛けさせていただいたところ、まずは岐阜放送さんからぜひというお話をいただき、それに応じてKBS京都さん、サンテレビさんも同時ネットが決まりました。3局とも西武ライオンズ戦中継で毎年数試合、ネット放送の実績があるので、弊社技術部と協議を重ね、放送可能のGOサインを頂きました」

 ――トントン拍子という感じでしょうか。

 「あ・うんの呼吸といいますかね。テレビの魅力は生中継が一番だと思っていますし、彼女たちの全力パフォーマンスを生で届けられる機会はそうそうないので、非常に魅力的なお話だと。なので、できるか・できないかで言えば、できますと。ただ、できるためにはどういったハードルを越えていけばいいのかという考え方で、このお話に取り組まさせていただきました。今回で言えば、関西の局さんもネットしたいということだったので、うち単独では生中継の実現は難しかったと思います。比較的早い2月のタイミングで、岐阜放送さんにご了解いただいたのが大きかったですね」

 過去に4度、ももクロのライブを放送した実績があるテレ玉にとっては「悲願」の生中継となる。

 ――テレ玉としても生中継の意向は前々からあったのでしょうか?

 「もちろんです。常日頃から生でやれたらいいなとは思っていました。決まった時は瞬間うれしいと思いましたけど、責任重大だなと思いましたね。やりがいのある仕事に向き合えた喜びもありますけど、それ以上に、このコンテンツをどういうふうにしてうまく皆さんに発信できるか、しっかりやらなきゃという責任感が強いですかね」

 遠藤プロデューサーとももクロの出会いは2011年7月3日。Zepp Tokyoで行われたライブに初めて足を運んだ。ももクロの川上マネジャーが埼玉県出身だったこともあり「ぜひ一緒に何か協力しながらやりましょう」と意気投合。以来、テレ玉のバラエティー番組や音楽番組、生活情報番組への出演が始まり、同年10月にはももクロのライブ「サマーダイブ2011~極楽門からこんにちは~」(8月20日開催、よみうりランド)を放送した。これは“完パケ”(完全パッケージ)の120分の素材だった。広告が大きな収入源の民放としては“常識破り”とも言える「CMなしの120分ぶっ通し」で、午後7~9時でオンエアした。

 「ももクロをライブを見て思ったのは、彼女たちの全力のパフォーマンスとモノノフ(ももクロのファン)との一体感がとてつもないこと。ライブの魅力をテレビで流す機会があるのならば、CMで(ライブを)切ってしまうのはもったいないし、そのまま流すことに価値があると思って、CMなしで放送させていただきました」

 この番組編成が可能になったのは、キー局、系列局との差別化を図る独立局の“事情”もあった。

 「キー局がマネできないものって何?となると、マネできないものではなく、マネするわけがない、マネするはずもないんだけれども、それすごい興味があるよというコンテンツの確保がとても大切。テレ玉という媒体に興味を持っていただいたももクロサイドのご厚意で、こうしたコンテンツが確保されているのだと思っています。だいたいCMなしだとか、ライブを午後7~9時のプライムタイムにドンと入れちゃうなんていうのは、当然キー局がやるわけがない。マネしようがないですよね」

 12年3月には「ももいろクリスマス2011 さいたまスーパーアリーナ大会」(11年12月25日開催)を、またもCMなしの120分放送。2度にわたる“英断”は大反響。思わぬところにも波及した。

 「笑い話になるかもしれませんが、昨年4月のテレ玉の新入社員募集の志望動機欄にももクロの名前が数多く載っているわけですよ。いまだかつてなかったことですよね。ももクロのライブ放送を見たから『テレ玉に非常に興味を持ちました』『テレ玉、おもしろいことやりますね』と。そもそもテレ玉への志望動機というのは『ライオンズ戦やレッズ戦の中継があるから』『地域に密着しているから』というものなんですが。そういうふうに僕らに振り向いていただけるのは、ありがたい話だなと思いました」(当日の放送は?…インタビュー後編、ももクロの魅力は“無垢”「涙から始まり、重なり合った偶然」につづく)

 【独立局】民放のうち、キー局を中心とするネットワーク系列に属さない放送局。現在13局ある。とちぎテレビ、群馬テレビ、テレビ埼玉、千葉テレビ放送、東京メトロポリタンテレビジョン、テレビ神奈川、岐阜放送、三重テレビ放送、びわ湖放送、京都放送、サンテレビジョン、奈良テレビ放送、テレビ和歌山。

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