球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

ビデオ判定適用拡大…名物“退場劇”の減少寂しい

[ 2014年4月6日 05:30 ]

 今季からボール、ストライクの判定以外はほとんどのプレーでビデオ判定が可能になった。監督が「チャレンジ権」を行使したり、行使して権利を失った後も審判員が判定に迷ったりした場合、ニューヨークのリプレー・センターに問い合わせる。センターには、全球場それぞれに設置された12台のカメラからの映像が映し出される画面が並ぶ。ここで映像精査が行われ、現場に回答する。

 田中のデビュー戦でもあったが、監督がゆっくり審判員に歩み寄り、声をかける。審判員はヘッドホンを着けリプレー・センターと話して、回答をコール。2~3分で静かに紳士的に決着する。

 昨季までなら監督が血相変えて飛び出し、審判員も身構える。監督、審判員の怒鳴り合いが始まり、監督が砂を蹴りあげたり、帽子を叩きつけたり、両手を後ろで組んで体をぶつけたり…そして監督へ退場宣告。こんな大リーグ名物のスペクタクルが消えてしまった。

 スタンドのファンもスコアボードのリプレーを静かに眺めるだけ。昨季はパイレーツのクリント・ハードル監督の8回をトップに5回以上退場の監督が7人。27チームの監督が計97回退場になった。今季は「監督も熱くならず、退場も激減だろう」(リプレー担当者)と寂しいことだ。

 システム責任者のジョー・トーリMLB副会長は言った。「私の監督時代にこのシステムがなくてよかった。おかげでワールドシリーズ制覇のリングが一つ増えた」。98年のヤンキース―パドレス戦は、球審の“誤審”で打ち直したティノ・マルティネスの満塁本塁打で初戦を逆転勝ちしたヤンキースが4連勝で王座に就いた。こんなドラマもなくなるのだ。 (野次馬)

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