球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

大リーグ機構否定の「飛ぶボール」疑惑 SI誌が「さまざまな細工をした」と結論

[ 2021年2月14日 05:30 ]

 新型コロナウイルスで不安いっぱいの新シーズンを前に大リーグ機構(MLB)にショックな調査報道が突きつけられた。15年にロブ・マンフレッド・コミッショナーが誕生して以来、「飛ぶボール」は常に選手間で問題にされた。MLBと公認ボール製造会社ローリングス(MLBが18年に買収)は否定してきたが、選手たちが疑ったように「さまざまな細工をしたボールを使った」とスポーツ・イラストレーテッド(SI)誌が結論づけたのだ。

 報じられた科学的データは詳細、図解の文章化も煩雑なので略し、スパイ小説もどきのSI誌の取材(証拠集め)がさすがだ。球団内部に通報者(スパイ小説のモグラ)をつくり試合球を持ち出してもらう。それを受け取ったSI誌の担当者が独自のボールの検査研究で知られる46歳の女性天体物理学者メレディス・ウィリス博士と契約し、ボールの「解体分析」を依頼した。モグラの中には「ボール管理が厳しくなった」と脱落するものもいたが、「CIAではあるまいし、この秘密主義は異常」と熱心に取り組むものもいた。おそらくMLBはSI誌の取材に気づいたのだろう。だが、MLBの商業主義から水漏れ。各球団限定販売の「試合に使用したボール」。球場で電光掲示するスタットキャストによる本塁打飛距離や打球速度、打球の角度なども役立った。試合による飛ぶボールの使い分けも判明した。

 ボール細工説の急先鋒(せんぽう)のアストロズのジャスティン・バーランダー投手は怒った。「マンフレッドは野球をジョークにした。4兆2000億円のMLBが420億円のローリングスを買収し勝手なことをやった」。この種の取材は、優秀な弁護士を集めてから始める。取材対象からの訴訟に備えるのだ。金と時間をかけSI誌が本領発揮した。(野次馬)

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