球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

もう始まっている?“アストロズ王朝”崩壊

[ 2022年11月13日 02:30 ]

 ワールドシリーズ(WS)を制したアストロズを、ニューヨーク・タイムズ紙は「ダイナスティ(中国などの王朝期)」と評した。野球用語の「ダイナスティ」とはどんな意味合いなのか。ア軍の強さは17年ドジャースを破って王座に就く前から目立った。しかし、この勝利はチームぐるみの不正なサイン盗み頼みだった。テレビでサインを見て球種を見破り、ドラム缶を叩く数で打者に球種を知らせた。MLB(大リーグ機構)のお粗末な調査もあってア軍は球界の悪役になったが、今季の王座で「王朝期」維持、というわけだ。

 野球用語辞典の「ダイナスティ」の定義は「複数回のWS制覇を続けるチーム」。10年間に3回以上の勝利チームが“王朝期にある”と呼ばれ、ヤンキース(1949~53年)、ブルックリン時代のドジャース(1950年代)を挙げる。中国の王朝の興亡史に球団の戦いを重ねたのだが、王朝の核は「固定されたメンバー」。高額年俸を目指しスター選手が動くFA時代には「死語」だが、ア軍は異色だ。20年にサイン盗み事件で解任されたジェフ・ルノー前GMのつくったチームの主力が健在だった。

 WS出場登録26人のうちルノー氏の解任後に獲得した選手は7人だけ。ルノー氏は野球界には戻らず、サッカー界に転じた。スペイン、アラブ首長国連邦など8カ国のサッカーチームに投資し、選手を探し…と多忙な日々を送る。「ア軍のWS出場はアフリカのガーナで知った。とても誇らしかった。ア軍の私への処分は不当と思うが、組織の長であるGMは責任を取らねばならない」

 王朝が滅びる連続が中国史だが、ア軍でもエースのバーランダー投手がFAに。ジェームズ・クリックGMとスコット・パワーズGM補佐の退任も決まった。ア軍王朝、滅びの始まりだろうか?(野次馬)

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