球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

“ITスポーツ化”で進む黒人少年の深刻な野球離れ

[ 2022年10月30日 05:30 ]

 ワールドシリーズ(WS)が“異常な状態”で行われているのにお気づきか。「アストロズにもフィリーズにも米国生まれの黒人選手がいない。ゼロだ」とAP通信。これは1950年以来初めてのこと。ジャッキー・ロビンソンが大リーグ史上初めての黒人大リーガーとしてドジャースでデビューしたのが47年、即WS出場を果たした。以来、米国出身の黒人選手不在のWSは50年のヤンキース対フィリーズだけ。今は中南米選手の活躍による人種の多様化の大波にのみ込まれ、ナショナル・パスタイム(国民的娯楽)の米国生まれの黒人選手は、大リーガーの7・2%の絶滅危惧種。「ヒューストン(ア軍)もフィラデルフィア(フ軍)も黒人の人口密度の高い都市なのに黒人選手が一人もいないとは…」とはニグロリーグ博物館館長の嘆き。

 今季のオールスター戦にただ一人出場した黒人選手ドジャースのムーキー・ベッツ外野手は「黒人選手が必要」と書いたTシャツを着てファンに呼びかけた。大リーグ機構(MLB)は危機感を持つものの、今の大リーグ野球を黒人少年たちから離れたものにしたのは、皮肉なことにコミッショナーのロブ・マンフレッド氏。野球の時短改革から始まった野球のITスポーツ化が、黒人少年たちを野球から遠ざけた。少年たちが、気楽にまねのできない“ハイテク競技”に目を向けてくれるはずがない。

 楽しみなのは黒人野球OBの存在だ。ア軍のダスティ・ベーカー監督(73)。昨季のWSはブレーブスに負けた。今回はどうか?指揮を執った5球団全てをポストシーズンに導いたが、WS制覇の夢は果たしていない。監督と同世代として気になるが、少年たちは無関心だろう…。 (野次馬)

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