球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

素早い球宴開催地変更は球界変身への第一歩

[ 2021年4月11日 05:30 ]

 大リーグ機構(MLB)が6日、オールスターゲーム(7月13日)をロッキーズの本拠地コロラド州デンバーに変更する、と発表した。当初の開催地はブレーブスの本拠地ジョージア州アトランタ。突然の変更理由は、ジョージア州の選挙新法がマイノリティー(人種的少数派)を厳しく制限しているためだ。

 「MLBは全ての国民が投票権を持つことを支持する。投票制限は我々の価値にそぐわない。それを示すための変更」とMLB。プロスポーツ界の超保守派で「ノン・ポリ=非政治集団」MLBの大変身だ。

 契機は昨夏の「黒人の命は大切だ」運動への出遅れの反省から。警官の暴力で黒人青年が殺され抗議の声を上げる一般市民と共に続々と抗議声明を出す各プロスポーツ団体の中でMLBは10日遅れの声明だった。「我々は世の中とは別の世界の住人なのか?」との声が選手だけでなく、白人で保守層、共和党(ドナルド・トランプ氏の政党)への献金者がほとんどの球団オーナーたちからも出た。

 ファンの動向に敏感に、と気にするMLBの突破口が昨年9月に誕生した民間非営利団体(NPO)「選手同盟=プレーヤーズ・アライアンス」。現役、OBの黒人選手だけ150人ほどが集まり黒人の社会的地位向上を目指す団体で、MLBと選手会(労組)合同で1000万ドル(約11億円)を拠出した。

 ここでMLBは現役、OB選手、各球団、企業スポンサーと話し合い、素早く球宴開催地変更を決めた。激怒したトランプ氏や現州知事が「大リーグをボイコットしろ」と叫ぶが、球宴を失ったアトランタ市に本社を置くデルタ航空、コカ・コーラ社はMLBを支持。球界の政治関与を危ぶむ声もあるが、球界変身の第一歩はひとまず「ヒット」の判定だ。(野次馬)

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