球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

大切なのは“勝利への意志” Wソックス・ラルーサ監督の説得力

[ 2022年6月19日 02:30 ]

 現役監督で話題になるのはホワイトソックスのトニー・ラルーサ監督(77)ぐらいだ。ご承知と思うが、メジャー歴代2位の監督通算勝利数の持ち主。昨季、野球人の“神棚”の殿堂から10年ぶりに現役復帰、監督デビュー球団のホ軍の指揮は35年ぶりだった。「時代が違う。今の監督はデータ・オタクのフロント幹部と電子機器に親しむ選手の連絡係。晩節を汚すだけ」と米メディアは危ぶんだが、ホ軍をア・リーグ中地区優勝に導いた。

 良くも悪くもエピソードは多彩だ。酒気帯び運転で2度の逮捕歴。「英語より早くスペイン語が話せた」というバイリンガルでマイナー時代のオフは大学の法学部に5年間通って弁護士資格を取得…。多彩な逸話の持ち主だ。

 今季の新エピソードは今月10日のドジャース戦。2ストライクから敬遠をし、逆転負けを喫した。2日後のレンジャーズ戦でもファンやメディアの非難に逆らうように2ストライク後の敬遠をし、逆転負け。本拠地球場のギャランティードレート・フィールドは「トニーを解任しろ!」とファンの怒りの声で満ちた。それでも「彼は平然としていた」とスポーツ専門局ESPN。

 「私は非難の声を片方の耳で聞き、ファンの様子を片方の目で見た。私が了解し、感謝するのはファンがそれほど勝利を望んでいることだ。しかし我々は勝てなかった。ファンは不満だろう」。感情を交えないハードボイルドな物言い。個人的にはユーモアと受け取り楽しむが、野球記者は困るはず。「説明責任から逃げる気はないが、今は話さない」

 監督コメントの広報談話化は時代の要請だが「野球で大切なのは、今も昔も、勝とうとする意志だ。これは数値化できるものではない」という言葉に、時を超えた重鎮監督の説得力を感じる。(野次馬)

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