球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

“名建築家”エプスタイン氏 コミッショナーでカムバックを

[ 2020年12月6日 05:30 ]

 カブスの編成本部長セオ・エプスタイン氏(46)が契約1年を残して辞任して20日ほど。エプスタイン氏は引く手あまた、複数球団の接触はあったはずだ。しかし、「球団からの電話は聞くが、21年シーズンの復帰は想定していない。球団に関わるとすれば経営陣(オーナーグループ)に加わってだろうか…」。そんな辞任会見の路線が確定した。

 エプスタイン氏は、02年オフに28歳の若さでレッドソックスGMに就任した。2年後には86年ぶりのワールドシリーズ(WS)制覇。1年間の辞任空白を置いて、復帰翌年の07年に2度目のWS勝利。12年カブスに転じ、16年にチームを108年ぶりのWS制覇に導いた。名門2球団の歴史的復活の立役者だ。

 「私は強いチームの維持には興味がない。強いチームをつくっていくのが好きだ」。球界では、編成部長やGMを「建築家」になぞらえるが、エプスタイン氏は選手に関するデータを集め、それを基に“チームのかたち”を構想し、レ軍、カ軍での計18年のフロント・トップの間に3度のWSを手にした名建築家だ。強豪球団をつくったGMが長く在籍し複数回WSを勝つのは珍しくないが、2球団で勝ったGMは5人しかいない。このまま引退しても殿堂入りは確実だろう。

 エプスタイン氏の辞任会見で印象に残った言葉がある。ファンに面白い野球を提供しているのかについての自問だ。「私にも責任があるが、あまりにデータ分析に偏った野球にしてしまった。チームづくりばかりでなく試合の戦術もデータ頼り。野球の美学、楽しさをデータが奪ってしまった」。フロント・トップの口からこんな反省の言葉は聞いたことがない。コミッショナーでカムバックを果たせないだろうか。(野次馬)

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