球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

新ポスティング制度…大リーグ一枚岩の“勝利”

[ 2013年12月29日 05:30 ]

 新ポスティング制度が発効して10日あまり。「入札上限額20億円(1ドル=100円換算)は見込んだ売値の半値以下。楽天は田中将大放出を止めるようだ」と気落ちしていた米国野球メディアはホッとした。「SPONICHIによると、楽天は田中を売る」とスポーツ専門局ESPNやニューヨーク・タイムズ紙が報じたのだ(米国メディアの多くは最初に報じた社名を記事に入れる)。そして楽天の正式発表。年末、年始のネタ切れ時に田中争奪戦は絶好の話題、と歓迎されている。

 楽天は「限度額に合理性がない」と怒った。入札金上限設定は「入札金額青天井では多くの球団が競争から排除される」と財力のない球団が言い出し論議が始まった。「では、入札に参加しやすい額に…」で決めた目の子算による金額だ。合理性などあるはずがない。大リーグ選手会でも「高額な入札金」を問題にしていた。「本来、大リーグに来る選手に回るお金。日本球団に流れるのはおかしい」と言うのだ。これも追い風になった。

 大リーグ機構の実務トップのロブ・マンフレッド最高執行責任者(COO)は「新制度でも裕福な球団が選手を獲るだろう」と言う。入札金はぜいたく税の対象外だが、選手年俸は課税される。納税覚悟のヤンキースやドジャースの獲得競争になるとの予想。機構中央基金に入った税金は低収入の球団に補強資金名目で分配される。大リーグ内のお金は大リーグ内にとどめ、還流させる。新ポスティングは機構、経営陣、選手会の“一枚岩”の反映でもある。

 野球に限らず、スポーツの国際化とはお金のあるところに才能が集まること。割り切って、マー君の移籍交渉を楽しむしかなさそうだ。

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