辻発彦氏 雄星以来の左腕エース目指す西武ドラ1・武内を絶賛 “東都ドラ1セブン”の出世頭に

[ 2024年2月17日 05:30 ]

辻氏と対談する武内(撮影・西尾 大助)
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 最速153キロで昨秋ドラフトでは3球団が競合した西武のドラフト1位・武内夏暉投手(22=国学院大)と、西武前監督でスポニチ本紙評論家の辻発彦氏(65)の対談が実現した。近年はチームに不在である左腕エースとなれる逸材は球種、フォームへのこだわり、さらに同じ東都大学リーグから1位指名された7投手「ドラ1セブン」への思いも披露。本音を引き出した辻氏は、今後の躍進を期待した。(取材構成・浅古 正則)

 辻「よろしくお願いします。まずはライオンズというチームの雰囲気はどう?」

 武内「投手陣はとても明るくて本当に元気いっぱいです。指名される以前から明るいイメージがあったので、その通りでした」

 辻「地元が福岡で八幡南高。私は佐賀。同じ九州人。甲子園に行っていないのも同じだね。国学院大に入って急成長した。体は元々、大きかったの?」

 武内「身長はあったけど、体つきはどちらかというときゃしゃでした。ウエートはガッツリ系はあまりしないけど、動きづくりというか、野球につながる動きづくりをして、球速が20キロぐらい上がりました」

 辻「20キロは凄い。左で150キロを投げられたら打者はきつい。真っすぐとカット…。一番、自信がある球種は?」

 武内「ツーシームです。握りは2種類で、普通の真っすぐに近いツーシームと落ちる系です」

 辻「左へのツーシームは武器になると思うよ。左打者の内に投げられないとプロでは抑えられなくなっている。本当に力感はなく、いいバランスで投げているね。特徴的だと思ったのは腕の振り。後ろが小さくて打者から見づらい。直球がガッとインコースに食い込んでくる。それは意識しているの?」

 武内「大学からですけど、それはとても意識しています。最初は矯正しようと意識的に腕の振りを小さくして、だんだんと調整してリーグ戦が始まる頃にちょうどよく収まったというか。2年から3年にかけて手応えがあって、成績にもつながりました」

 辻「自分がドラフト候補になって、プロのどんな投手に注目していたの?」

 武内「(西武で同じ左投手の)隅田さんはよく見ていました。多彩な変化球ですし、真っすぐも強い。ストライクゾーンがきっちりしていたという印象がありました」

 辻「隅田にいろいろ話を聞いた方がいい。彼もプロで苦労したことがあるはず。アマチュアでは少し外れてもストライクを取ってくれるが、プロは違う。打者に際どいところを見極められて、カウントが苦しくなってストライクを取りにいって打たれる。そこを経験して投げていけば自信も出てくる。監督として新人投手を預かって一番、気になるのはケガ。キャンプでは注目されるし、飛ばしすぎてしまう。そこは監督、コーチにどう言われているの?」

 武内「自分の体なので自分が一番分かっている。何かあったら自分から伝えなければいけない。そういう“自己管理を自分でやっていこう”とは言われています」

 辻「大学時代に故障はなかった?」

 武内「大学時代はないけど、軟式野球をやっていた中学時代に左肘の軟骨で手術を受けています。高1まではその影響で投手をやっていなくて、2年生から投げるようになったんです」

 辻「東都“神セブン(ドラ1セブン)”って言ったっけ?青学大から広島に入った常広君と阪神の下村君。巨人に中大の西舘君が入って、同じパ・リーグの日本ハムには東洋大の細野君…」

 武内「やっぱり意識します。今はどうでもいいけど、後々は自分が抜け出したいと思っています」

 辻「一番、意識している選手は?」

 武内「自分は巨人の西舘ですかね。4年生の秋の中大戦で、7、8割で抑えながら投げているのにスピードがあって変化球も切れていた。凄いなと思っていました」

 辻「あくまでも将来的な話として聞くけど、メジャーへの夢は?」

 武内「今は意識していませんが、スケールのある投手にはなりたいと思っています」

 辻「西武は先発陣が充実している。競争は激しいけど先発ローテーションに食い込んでいく力はあると思います。期待しています。今日は疲れている中、ありがとう」

 武内「ありがとうございました」

 ≪規定&2桁勝利 左投手は過去5年不在≫00年以降の西武で規定投球回に達し2桁勝利を挙げた投手は17人(41度)。そのうち右投手は6度の松坂大輔、岸(現楽天)を筆頭に14人で34度だが、左はわずか3人で7度。達成したのは02年の三井浩二、05、08、10年の帆足和幸と16~18年の菊池雄星(現ブルージェイズ)。右投手は、昨年も平良(150イニングで11勝)、高橋(155イニングで10勝)が規定投球回に達し2桁勝利の活躍。新人の武内、昨年9勝の隅田らの中からフルシーズン活躍する先発左腕が加われば、さらに強力なローテが組めそうだ。

 ◇武内 夏暉(たけうち・なつき)2001年(平13)7月21日生まれ、北九州市出身の22歳。折尾東小3年から軟式野球を始め、八幡南では1年秋からベンチ入り。国学院大では2年秋から東都リーグで登板し、3年秋に4勝を挙げMVP&リーグ優勝に貢献した。通算成績は36試合で14勝7敗、防御率1.58。1メートル86、90キロ。左投げ左打ち。好きな食べ物は焼き鳥。

 【取材後記】じっくり投球を見させてもらってからのインタビュー。いい真っすぐがあってツーシームもある。打者目線で言わせてもらえば、あのフォームであのコースに、あの“圧”で投げられたら打てそうもない。ファウルで逃れるのが精いっぱいだと思う。ブルペンで一緒に見ていた東尾さんら評論家陣の評価も高かった。現時点でも十分にローテーションに入れる力はあると思う。

 これから紅白戦や練習試合、そしてオープン戦と進んでいく。大学時代は打たれるはずのない球を打たれてプロの厳しさを痛感することもあるだろうが、実戦の中から何かをつかんでほしい。映像よりも、投手コーチの指示よりも、マウンドに立って経験し、自分で気付いたことが一番身に付くものだからだ。

 インタビュー前、少し遅いなと思ったら、球場玄関前で熱心にサインをしていた。ファンを大切にできればファンに愛してもらえる。イケメンだし、スター性もある。5年ぶりのリーグ優勝を狙うチームに、楽しみな投手が入ってきた。(スポニチ本紙評論家)

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