【内田雅也の追球】胸に手を当て考えたい ベストを尽くすこと、これに尽きるのではないか

[ 2023年6月26日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3ー5DeNA ( 2023年6月25日    横浜 )

5回、大山の適時打で生還した近本(右)を迎える岡田監督(撮影・光山 貴大)
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 関係者駐車場にも歓声や大音量の音楽が響いていた。阪神監督・岡田彰布はDeNAの勝利に沸く横浜スタジアムを何も言わずに引き上げていった。就任後、初めての会見拒否だった。

 かつてはよく見かけた光景だった。吉田義男も村山実も、記者団に背を向けた時があった。何でも記事になる。恐らく世界のスポーツで最も番記者が多い阪神の監督は大変である。自分が発した言葉が独り歩きする。そんな不信感や怒りが読み取れた。

 ただ、岡田は野球に関しては覚悟ができているはずである。
 今季初めて、それも首位攻防でカード3タテを食った。首位から陥落した。連敗は5に伸びた。

 だから何だというのか。以前、自ら「そりゃ、5連敗も6連敗もするよ」と話していた。長いシーズンである。山あり谷ありは承知している。しかも、シーズンはまだ半分も終えていない。

 喧騒(けんそう)を離れ、どこか静かなところで独りになり、静かに胸に手を当てて考えたい。

 何か落ち度はあっただろうか。選手たちは懸命にやっているではないか。長いシーズンならば、長い目で見たい。打撃不振が続く佐藤輝明を抹消した。開幕投手もクローザーも、そして主軸打者も2軍にいる現状である。それでも、まだ首位に0・5ゲーム差の2位なのだ。

 本音を書けば、首位を快走していた当時も、このまま独走できるわけはないと思っていた。いや、本当に「アレ」を成し遂げる力があるのならば、DeNAに一度追い越された後、いかに盛り返せるかだと踏んでいた。いかに立ち直り、建て直すか。つまり、勝負はこれからなのだ。

 大リーグ監督として、ア・ナ両リーグで優勝に導いた自称「勝利中毒」のスパーキー・アンダーソンが著書『スパーキー!』(NTT出版)で<わたしはバカだった>と反省をこめて書いている。<ベストを尽くせば、負けることは恥ずかしいことでもなんでもない。勝っても負けても、ゲームは終わる。終わってしまえば、すべてを忘れて、次のゲームにそなえればいい>。監督の仕事は<選手にベストを尽くさせること>なのだ。

 ならば、懸命にプレーしている(つまりベストを尽くしている)選手の姿を見れば、もう十分である。感謝と希望の思いを抱いて眠り、明日を迎えたい。=敬称略=(編集委員)

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