【能見篤史氏 直撃キーマン2】阪神・岩貞 先発再挑戦で「150キロとか出るようにやりたい」

[ 2023年2月23日 06:01 ]

対談で笑顔を見せる岩貞(撮影・北條 貴史)
Photo By スポニチ

(1から続く)

 能見 春季キャンプも終盤。先発に再挑戦している中で現状は。

 岩貞 最初は(投球フォームの部分で)意外とうまくハマった感じがしました。ここから他に何を磨いていけばいいんだ?くらいに良かったんですよ。ただ、第4クール(2月14~16日)くらいから球速が足りないと思い始めました。昨年、リリーフで投げていたようなフォームの感覚でやり始めていますけど、バランスが崩れる時もあって…。

 能見 余分な力がずっと入っている状態かもしれないね。意外と球速は気にしない方が良いかもしれない。(ホーム)ベース板の上で(ボールが)強ければ良いんだから。

 岩貞 キャッチャーには良いボールが来ていると言われますし、変化球も良い感じなんですが、以前、先発をやった時(16年)と比べても、少し制球が良くなったくらいで(今は球速が出ないから)正直、物足りなさを感じています。

 能見 中継ぎから先発に戻るのは思った以上に難しいよ。一番は体の使い方。先発をしていた16年の時はすごく良い投げ方をしていた。下半身の力を腕の振りに伝える動作がちゃんとできていた。そこからオフに筋力アップで体重が5キロ増え、以前の体の使い方ができなくなったよね。先発仕様に戻していくのは難しい。そのあたりはどう考えている?

 岩貞 フォームを戻すことは考えていなくて、昨年のリリーフの時にクイック気味にやっていて、それを中心に今春のキャンプインからやっていました。ただ、繰り返しにはなるんですが、ブルペンで6、7割の力で100球を投げてみて“これだったら先発でいけるな”と思っていたんですけど、自分の特徴がないなと…。腕の振りも6、7割でキャッチャーはナイスボールと言ってくれるんですけど、モヤモヤモヤモヤして…。昨年、150キロをボーンと投げた気持ち良さがない感じです。

 能見 難しいなあ。

 岩貞 そんな状況なんで今はスピード重視のフォームで投げている感じです。

 能見 バッターの反応も大事になってくるよね。力感がなくても差し込んでいるとか。

 岩貞 出力を出していないんで物足りなさがあるんですよね。

 ――今、どんなことをアドバイスしてもらいたいか。

 岩貞 聞くよりもフォームを見てもらいたいですね。“そんなもんでいける”なのか“もっと特徴を出していかないと”なのか。僕は、やっぱりスピードも145キロそこそこじゃなくて、150キロとか出るようにやりたいんですよね。

 能見 145キロで十分じゃん。(僕は)結構出力を上げてやっと145キロ出るか、出ないかなのに。キャンプの期間は力むのも一つの手だしね。試合もそうだけど、力んで、力んで、疲れた時にどういうフォームの動きができるかが大事。球速じゃなくて(ホーム)ベース板の強さがあれば全く問題ない。変化球も勝負できるボールを持っているから。

 岩貞 なるほど…。シーズンを考えれば今、力むことも大事なのかなと思いますね。実戦も入りますけど、ブルペンでは自分が伸びるためにはどうするかに重きを置いてやりたいです。

 能見 確かに、7、8割の力感で出力も出せていない中で腕も振れていない感覚はね…。それって200球ぐらい投げてから出てくる感覚だから、それは気持ち悪いよね。力があり余っているのに制御している。それで打たれたら余計にね。

 岩貞 悔しいですよね。

 能見 最初から全力でいって、疲れた中で体をうまく使っていく投げ方もありかも。球の高さだけ気をつければいい。「貯金5」だよ。期待しているよ。

 岩貞 はい。頑張ります。

 <25日ヤクルト戦先発予定>

 岩貞は次回、チームのオープン戦開幕となる25日のヤクルト戦(浦添)で先発予定だ。「次はもうちょっとイニングが伸びると思うので、投球間隔を意図的に詰められるようにやりたいなと」。1イニング集中の中継ぎ時は一球、一球の投球間隔を長く取っていたが先発では野手のリズムなども考慮して短くする考えでいる。「今は(投球間隔の修正が)一番難しい。先発をやる上でかなり大事な部分」。今春最長の3イニングを有効活用し、投球間隔も先発仕様に修正していく。同じ左腕の大竹も実戦で好投しており、開幕ローテーション入りへ向けて結果も求めるマウンドになる。(遠藤 礼)

 【取材後記】

対談終了後、紙面掲載用の写真撮影を終えると気づけば“延長戦”が始まっていた。岩貞が、中継ぎ時に取り入れていたクイック投法を先発でも継続することについて意見を求め、能見氏も的確にアドバイスを送っていた。

 「僕の師匠です」――。対談中、何度も口にした言葉は混じり気のない純度100%だ。その関係は選手と評論家という立場になっても不変。プロとしてのすべてを、その背中から学んできたからこそ、今でも岩貞の指針は「能見篤史」のままだと感じた。

 能見氏も未経験の中継ぎからの先発再転向という難しいミッションに挑む今季。16年の10勝を超えるキャリアハイと目標は高い。受け継いだ背番号14を“自分色”に変えるこれ以上ない機会だ。

続きを表示

2023年2月23日のニュース