松井稼頭央新監督、平石ヘッドと築く常勝西武…鍵はオンとオフの切り替え PL先輩後輩2トップ対談

[ 2022年11月3日 05:00 ]

笑顔でポーズをとる松井監督(右)と平石ヘッドコーチ(撮影・白鳥 佳樹)
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 西武は2日、埼玉県所沢市の球団施設で秋季キャンプ初日を迎えた。松井稼頭央新監督(47)が就任し、ヘッドコーチには打撃コーチから平石洋介氏(42)が昇格。PL学園の先輩後輩でもある新体制のツートップが対談し、4年ぶりのリーグ制覇へ向けたチーム強化や、常勝軍団形成への思いを語り合った。(取材構成・神田 佑、春川 英樹)

 松井監督(以下、松) 楽天の時から指導者として“いつか一緒にやりたい”とそんな話はしてたよね。

 平石ヘッドコーチ(以下、平) “いつか一緒にやりたいな”と言ってくれて。でも、その時は本心かどうか分からなかった…。

 松 本心や!本心!

 平 21年オフに監督がヘッドになった時に“力を貸してくれないか”と。当時お世話になっていたホークスで2年やって、やり残していたこともあったので迷っていたところはあった。

 松 楽天では現役も一緒にやったし、(平石ヘッドが)コーチ、2軍監督の時にプレーもした。その時の時間が本当に大きかった。監督も経験して野球もよく知っている。一緒にやりたい、力を貸してほしいと。

 平 僕も一緒にやりたいなという思いはずっとあった。そこはもう“決断しよう”と。ずっと大好きな先輩でしたし、気遣いはしますけど、本当に何でも話せた。

 松 イージーな先輩?

 平 ちゃいます!僕が楽天の2軍監督の時には、必ず敬語で接してくれたし、それは本当に助かりました。

 松 2軍監督としても厳しかった。選手を思うこともあれば、ピリッとしなかったら、ちゃんと言う。何でも言うからね。

 平 えっ?ちょっと待ってください…。

 松 それは僕が止めていかないと(笑い)。でも、それだけ熱いし、選手、チームのことを思っているから、俺はいいと思う。

 平 まあ、監督はソフトですよね。人間としては本当に優しいと思いますよ。

 松 そこがネックだよね。優しいのが…。

 平 ただ、怒ったら本当に怖い。楽天の時に2回ある。後輩が怠慢プレーして…。あれは雰囲気があった。震え上がるくらいの厳しさは持っている。

 松 怖くないよ(笑い)。

 松 チームもオンとオフをしっかりね。ワーワー言っていても、パッとやるときはやる。オンとオフの違い、メリハリってのは米国に行って本当に感じた。

 平 今回、松井体制になり、集合時間を“オンタイムにしよう”と話をさせてもらった。これまでは10、15分前に出てきても、集合までダラダラ待つ時間が長かった。無駄な時間を過ごすくらいなら、それまでに体のチェック、準備に充ててほしいと。

 松 その時間までは自分の時間だから、有意義に使ってほしいとね。

 平 早く集まったからといって、1分たりとも早く開始しない。集合までに自分の体を把握する。動き始めて“あれ、今日おかしいな”じゃ遅い。野球界のトップでいる以上、準備の仕方もプロであってほしい。僕がライオンズに来て、一番まだ欠けているんじゃないか、と思ったところだった。

 松 まずはウオーミングアップからだろうと。その意識が変われば行動も変わる。そうなれば、球際も変わってくると思う。今はそこしか言ってないよね。キャンプでもアップをバッとやっていたら格好いい。“うわ、プロは違うな”“ライオンズの選手って凄いな、ああやって準備するんだ”と思われるようなチームにね。

 平 今までのライオンズとガラッと変えていかないと。今まで通りやっていたら苦戦する。伝統的に長い間、常勝軍団をつくるのであれば、そういったところですよね。

 松 そういう隙のないところは目指すけど“若いヤツがちゃんとやれ”じゃなく、やっぱりレギュラーが背中で見せることで若い選手が“もっとやらないとアカン、もっとやらないと抜けない”と相乗効果がある。それが伝統として継承されていくと思う。それは山川にも伝えた。レギュラーが背中で見せる。走りきる、最後までやりきる。そこは山川にも“しつこく言っていくぞ”とね。

 松 戦いはバリエーション豊富にいきたいよね。単に走るだけじゃアカンし。僕らの(現役の)時もそうだったけど、走る人もおれば、還す人、大きいのを打つ人、役割、役割でみんな持っているものを、いいものを出せるように。1番については就任会見でも聞かれたけど、秋山(現広島)が米国挑戦してからずっとそこが、とね。

 平 難しいところですよね。

 松 外崎が1番だったら怖い。一発も、足もある。侑司(金子)ならスイッチ、源田も足が使える、となればバリエーション豊富かな。まあ、やりながら。いろいろ話しながらだね。

 平 監督が“こう”と思ったことは絶対にやってもらいたいですね。表立って全責任を負うのが監督なので。後悔してもらいたくないので。

 松 せっかく新しくなるので、いろんなことに挑戦してみたい。練習のことも、そう。選手の声を聞きながら、いかにベストでどう試合に入っていくかをまず考えることが大事。ヤクルトがデーゲームで練習を自主練習にしたりとかね。ヘッドも楽天の時にやってたよね。

 平 勝ったらいいけど、負けると記者の人が“こんな練習にしていましたが…”とか聞くんですよ。勝ったときは聞かないのに…。そんないらん質問されたら、僕が監督の代わりに怒りますよ(笑い)。選手がその気になってやってくれれば、ですね。

 松 当然、選手が中心。選手たちが“よっしゃ、いくぞ”と、こういう雰囲気を出してくれればいいね。

 ≪PL「付き人制度」で同じ系統≫松井監督と平石ヘッドはPL学園の先輩後輩で、縁も深かった。同校野球部では「部屋子」と呼ばれる付き人制度のような上下関係があり、2人は同じ系統だった。「代々たどっていくと僕は監督の系列。歴代の先輩が使っていたものに“第何期誰々”って書いてある。監督の名前があるテレビ台を使っていました」と平石ヘッド。松井監督の5学年上が元ヤクルトの宮本慎也氏で、その上が中日・片岡篤史2軍監督という豪華な“家系”だったという。

 ◇松井 稼頭央(まつい・かずお)1975年(昭50)10月23日生まれ、大阪府出身の47歳。PL学園から93年ドラフト3位で西武入団。04年からメッツなどメジャー3球団でプレーし、11年に楽天移籍。18年に西武に復帰し、同年に現役引退。19年に西武2軍監督、今季は1軍ヘッドコーチを務めた。1メートル77、85キロ。右投げ両打ち。

 ◇平石 洋介(ひらいし・ようすけ)1980年(昭55)4月23日生まれ、大分県出身の42歳。PL学園―同大―トヨタ自動車を経て、04年ドラフト7巡目で楽天入り。11年に現役引退し、12年から楽天コーチ。18年途中に1軍監督代行。19年は監督を務め、20、21年はソフトバンクで1軍打撃コーチなどを歴任。1メートル75、75キロ。左投げ左打ち。

 ≪野球も私生活もあうんの呼吸≫【取材後記】2人の共通点を挙げるなら、イケメン、俳優のような目力、こてこての大阪弁。シーズン中の遠征は飛行機も新幹線も隣の席だった。席割りはマネジャーが決める。松井監督が「いつの間にか隣に。こっちはお願いしていないのに」と水を向けると、平石ヘッドは「“なんでお前隣やねん”と思われていたかも…」。あうんの呼吸で笑わせてもらった。

 真剣な野球の話でも呼吸が重なった。今季は辻前監督と松井監督(当時ヘッドコーチ)がベンチで並んで立った。一部では、采配を任せたことがあったのでは?という臆測も。これに対し「一切ないです。(間違った臆測は)松井監督も本意じゃない」と否定したのが平石ヘッド。あくまで辻前監督の「決定」に、松井監督がサインを出してチームに伝達する役割。松井監督が「僕がサインを出し間違えたことはありましたけど」と冗談でかぶせ、空気を和らげた。

 歴代名監督の傍らには名コーチあり。47歳に42歳と若い2人を中心とした新生ライオンズの来季が待ち遠しい。(西武担当・神田 佑)

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