広島新庄・平田 天国の父へ届けた先制打のプレゼント

[ 2021年3月28日 05:30 ]

第93回選抜高校野球大会第8日第1試合 2回戦   広島新庄2ー5智弁学園 ( 2021年3月27日    甲子園 )

<智弁学園・広島新庄>2回2死二塁、広島新庄・平田は先制の左前適時打を放つ(撮影・平嶋 理子)
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 【お帰り!春球児】一人じゃない。平田龍輝には、心を許せる友がいる。ともに戦う仲間がいる。甲子園での思い出もできた。2回2死二塁から先制の左前打。外角137キロ直球を引きつけて逆方向へ運んだ。父へのプレゼントだった。

 「甲子園ではレベルの高いチームと戦うので、より以上にみんなの力が必要になる。それを感じました」

 人とは違う経験をしてきた。離婚のため、幼いときに別れた母の顔は知らない。その分も愛情を注いでくれた父も天国にいる。小学校3年時、10月20日の出来事だった。父・英夫さんが交通事故で同乗した叔父とともに亡くなった。外に食事に出掛けようとしたときだった。祖母・千河子さんが「もう(時間が)遅いから子供は駄目」と止めなければ、一緒に巻き込まれていた。

 突然の別れ。空白の時間を埋めてくれたのが野球だった。祖父・弘美さんが監督を務める大星軟式スポーツ少年団で魅力に取りつかれた。父も高校まで野球をやっていた。「一生懸命やっている姿を一度見てもらいたかった」。事故現場に残された遺品の財布は今でも使っている。高校生らしくない古いタイプのボロボロになったもの。でも、それがあると安心する。

 広島でも桜が咲いている。もうすぐ4月。みんなに推されて選ばれた生徒会長として新入生を出迎える。「挑戦する意味を伝えていきたい」。新しい仲間が増える、春が来る。(鈴木 光)

 ◆平田 龍輝(ひらた・りゅうき)2003年(平15)6月6日生まれ、山口県平生町出身の17歳。佐賀小では大星軟式スポーツ少年団に所属。中学では山口東リトルシニアで全国大会準優勝でベストナインを獲得。広島新庄では昨秋からレギュラーで公式戦は打率.469。50メートル5秒9。1メートル70、70キロ。右投げ左打ち。

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2021年3月28日のニュース